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「所有者不明の土地増加 公共事業の遅れ深刻化」(7月4日、NHK NEWS WEB)
全国各地の公共事業や災害復興等の現場で、所有者が誰か判らない土地が数多く見付かり、事業が遅れるといった影響が出ている事が、自治体等への取材で判りました。相続や住所変更の登記が行われない儘、長年、放置されているのが主な原因で、専門家は「土地や不動産登記を巡る制度の改善が必要だ。」と指摘しています。
今年3月に開業した北海道新幹線の建設工事や、東日本大震災の被災地の高台移転等の現場で、所有者が誰か判らない土地が、数多く見付かっています。北海道新幹線の建設工事では、木古内町の建設予定地に在った畑の中の小道の所有者を調べた所、昭和2年に住民等68人の共有名義で登記されていました。多くは既に亡くなったと見られますが、相続の登記は殆ど行われておらず、「鉄道・運輸機構」が全国の自治体から戸籍や住民票の情報等を取り寄せて調べた所、相続の権利が在る人が900人以上に上る事が判りました。1人1人と交渉して相続の登記を続け、最終的に権利関係の調整が終わったのは、新幹線の開業の僅か半月前。用地の取得に向けて動き出してから、10年以上が経っていました。町内会長として用地買収に協力した工藤嗣美さんは、「権利者の数が余りに多いので驚きました。資料が膨大になり、頭を抱えました。」と話していました。
一方、所有者が誰か判らない土地は、東日本大震災の被災地の復興にも影を落としています。津波で大きな被害を受けた宮城県南三陸町では、山林を切り開いて役場や病院、公営住宅等を整備する高台移転事業を進めています。ところが、買収予定地の中に相続の手続きが取られない儘、長年放置されていた土地が見付かりました。町が調査した所、買収の同意を得なければならない相手は、元の所有者の曾孫の代迄広がっていて、30人に上りました。1人1人と交渉し、全て同意を取り付けるのに、1年余り掛かりました。管財課の仲村孝二課長は「こうした問題が無ければ、半分の期間で買収を終えられただろう。」と話しています。
所有者が判らない土地は全国各地で見付かって、国土交通省が去年行った調査では、都道府県の用地担当部局の96%、市町村の建設担当部局の50%が「過去5年間の事業で、所有者の所在の把握が難しい土地が存在した。」と回答しています。
国は、社会の高齢化や都市部への人口の集中を背景に、「所在が判らない土地所有者は、今後10年間で倍増する。」と見ており、対策の検討を始めていますが、問題解決の糸口は見見付かっていません。
不動産登記法に詳しい早稲田大学の山野目章夫教授は「所有者が判らない土地の問題は、過去の積み重ねによって起きている問題なので、新しい制度の創設も視野に、思い切った対策を考えていかなければならない。」と指摘しています。
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遠い親戚になるが、中国地方に広大な土地を所有する人物・A氏が居る。A氏の父親は地元の大地主で、多くの小作農を抱えていた。山林も幾つか所有しており、当時は高値で売り買いなんかされていなかった松茸なんぞも、嫌という程取れていたのだとか。
然し、敗戦後の農地改革によって、「地主制度」は崩壊する。A氏の父親が所有する土地の多くは、政府に安く買い上げられ、小作農達に売り渡された。まあ其れでも、A氏の父親には広大な土地が残りはしたのだが。
で、A氏は父親から広大な土地を相続した訳だが、当該地は僻地と言って良い所で、住むのは非常に不便。だから彼は今、都市部に住んでいるのだが、相続した土地には荒れ果てた家が無人の儘建っている。「更地にしたくても、其の費用が馬鹿にならない。売却したとしても二束三文にしかならないだろうし、抑、買い手が簡単には見付からないだろう。」との事。
更に厄介なのは、其れ等の土地の名義がA氏の祖父の儘になっている点。広大では在るものの、二束三文にしかならない土地で、名義変更の費用が馬鹿にならない事から、「A氏の祖父→A氏の父→A氏」という相続の過程で、名義変更が一切行われていないと。当該地の固定資産税は死亡しているA氏の祖父名で請求され、A氏が其れを納付している事から、特に問題にはならない様だ。A氏の祖父の生年月日を確認すれば、既に生存していないで在ろう事を自治体も判ってはいるのだろうけれど、「新しい納税義務者を特定する為の相続人調査には、多大な時間と費用が掛かるので、請求した固定資産税が払われている限り、黙認している。」という事らしい。
そういったケースも積み重なり、「所有者不明の土地は、今後10年間で倍増する。」という見込みになっているのだろう。