「風刺」とは片腹痛い

一昨日に行われた「ジャイアンツv.s.ホークス」戦の地上波の視聴率（関東地区）が７．６％で、同時間帯に放送されていた番組では最下位の数字だったという。ジャイアンツ戦絡みの視聴率の低さには慣れっこになっていたが、交流戦とは言え優勝が懸かった試合の視聴率がこれ程迄に低く、且つ同時間帯での最下位というのには驚いてしまった。

閑話休題。

今月の１７日、宮崎勤死刑囚等３名の死刑が執行された。これで鳩山邦夫法務大臣の下では４度目、計１３人の死刑が執行され、１９９３年３月の執行再開以降、最も執行数の多い法務大臣という事だ。これを受けて１８日付けの朝日新聞（夕刊）のコラム「素粒子」が「永世死刑執行人　鳩山法相」、「２ヶ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。又の名、死に神」と書いた所、約１，８００件の抗議や意見が寄せられたそうだ。

「極刑を実施するんだから心境は穏やかでないが、どんなに辛くても社会正義の為に止むを得ないと思って来た。」と鳩山大臣。法律に従って己が職務を遂行している訳で、誰が好き好んで死刑執行を命じようか。社会の安寧を維持する為に、好まれざる職務を務めている彼を、「永世死刑執行人」だ「死に神」だと称するのは非常に許し難い。

又、鳩山大臣は「（死刑囚にも）人権も人格も在る。司法の慎重な判断、法律の規定が在り、苦しんだ揚げ句に執行した。彼等は死に神に連れて行かれたのか！」、「私に対する侮辱は一向に構わないが、執行された人への侮辱でも在ると思う。軽率な文章が世の中を悪くしていると思う。」と怒りを露にした。「死者に鞭打たたない。」、「死んだら全て良い人になってしまう。」といった“日本的美学”には疑問を感じている自分なので、「執行された人への侮辱」云々には論評を控えるが、今回のコラムが鳩山大臣、そして何よりも刑務官に対する侮辱なのは確かだ。

条件反射の如く「だから朝日新聞は駄目なんだ！」と非難する思考には相容れないが、少なくとも今回のコラムには異を唱えたい。抗議が多く寄せられた事に対して朝日新聞は「死刑執行の数の多さをチクリと刺したつもりです。」、「風刺コラムはつくづく難しいと思う。」、「法相等を中傷する意図は全く在りません。」等のコメントを出した。ヒトラーがユダヤ人の大虐殺を行っていた時、又はスターリンが“血の粛清”を行っていた時、彼等を「死に神」と称して糾弾するのは風刺足り得るが、今回のケースが風刺とは片腹痛い。あのコラムを書いた記者はロシアの小話（アネクドート）でも読んで、「風刺」の意味を勉強した方が良いのではないか？見苦しい言い訳等せずにスパッと謝罪するのが、社会の公器として在るべき姿勢だろう。