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千葉県富津市の清掃会社に勤める町谷亜八(まちや あや、通称:ハチ)は、過去に傷害事件を起こし、執行猶予中の身だ。漸く手に入れた「真っ当な暮らし」から食み出さなぬ様生きている。唯一の愉しみは、祖父の遺したアウディでアクアラインを走る事だった。或る日、血の繋がらない姉・睦深(むつみ、通称:ロク)から数年振りに連絡が入る。2人の弟・侑九(たすく、通称:キュウ)を脅す人物が現れたと言うのだ。
キュウには、ダンスの天賦の才が在った。彼の未来を守る為、ハチとロクは、嘗て或る罪を犯していた。折しも、華々しいデビューを飾り、キュウは一気に注目を集め始めた所で在る。事件が明るみに出れば、スキャンダルは避けられない。弟の為、ハチは平穏な日々から一歩を踏み出す。
一方、キュウをプロデュースする百瀬(ももせ)は、其の才能に惚れ込み、コロナ禍に閉塞する人々を変えるカリスマとして、彼を売り出し始めた。「Q」と名付けられたキュウは、SNSを通じ、世界中で拡散され続ける。嘗て無い大規模ゲリラライヴの準備が進む中、Qへの殺害予告が届く。
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呉勝浩氏の小説「Q」は、「ダンスの天賦の才を有し、絶世の美少年で在る“キュウ”。」と、そんな彼を取り囲む大人達を描いた作品。多くの人々の耳目を集める存在だけに、キュウには様々な思惑を持つ大人達が群がる。姉で在る“ハチ”は、彼を救うべく立ち上がるが・・・というストーリー。
“毒親”を含む、腐った大人達が少なからず登場するし、Qアノンやコロナ禍が取り上げられる等、読み進めれば読み進める程に、心の中に“ザワザワとした不安”が掻き立てられる。読み終えた後、“爽快感”は全く無い。
又、著者が此の作品で訴えたかった事が、判る様で、実は良く判らない。申し訳無いけれど、読み終えて残ったのは“不完全燃焼感”のみ。此れ迄の“呉作品”の出来が良かっただけに、ガッカリさせられた。
総合評価は、星3つとする。