先月、「余程ダンピングしない限り、買い手が付かないのでは?」という記事の中で、スペインで建設中の“間抜けな”高層住宅を取り上げた。高さ約200m、47階建ての「In Tempo」なる高層住宅が、完成間近になって「21階より上は、エレヴェーターが未設置で、新たに設置するのも無理。」と言うのだ。元々は「20階建て」で計画されたものの、後に「47階建て」に変更となり、其の際、設計者が増築分のエレヴェーターの設置を忘れてしまった事が原因という、丸でコントの様な話だった。
「47階建てなのに、21階より上はエレヴェーターが未設置って、在り得ないビルだよなあ。」と思ったものだが、海外から更なる在り得ないビルのニュースが。今度は「車を溶かすビル」なのだとか。
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「高層ビルの反射光で車が溶ける、開発業者が調査開始 ロンドン」(9月4日、AFPBB News)
英ロンドンで、新たに建設中の超高層ビルに反射して集まった日光によって、近くに止めてあった自動車数台の車体が溶けてしまった事が判り、建設プロジェクトを担当する開発業者は3日、調査に乗り出している事を明らかにした。
問題のビルは、同市中心部に建設されているガラス張りのタワー「20フェンチャーチ・ストリート」。上部に向かって広がる形状から、通称「ウォーキートーキー(携帯用無線電話機)」と呼ばれている。
ロンドン市民等は、此のビルが反射する太陽光から目を守る様にしてビルの傍を通っているが、自分の車が此の光の所為で溶けてしまったと苦情を寄せる人も数人出ている。
地元のビジネスマン、マーティン・リンジーさんは、此のビルの近くに自分のジャガーを止め、暫くして車に戻ってみて、目を疑った。車の片側の外板が歪み、サイドミラーとボンネット上のジャガーのエンブレムが溶け出していたのだ。
リンジーさんは英国放送協会(BBC)に対し、「フロントガラスに建設会社からの貼り紙が在り、『御車が変形しています。御電話にて、御連絡願います。』と書いて在った。」事を明かし、車が此処迄損傷してしまった事を「信じられなかった。」と語った。
3日には同ビルの周囲に大汗を掻いた報道陣が詰め掛け、或るリポーターは反射光で熱したフライパンで卵を焼いてみせた。ウォーキートーキーには今や、「スカイスクレーパー(高層ビル)」ならぬ「フライスクレイパー」という渾名迄付けられてしまった。
物理学者等は、同ビルの外壁が凹面鏡状になっている為、太陽光線が一点に集中していると、問題の原因を指摘。英紙タイムズは、2日の同ビル付近の気温は45度を超えていたと伝えた。
不動産開発業者のランド・セキュリティーズとカナリー・ワーフ・グループはリンジーさんに謝罪し、建物がジャガーに与えた損傷を弁償した。一方で、現場付近に在った3台分の駐車スペースは使用中止とされた。
両社は、此の現象の原因が「現在の太陽の昇る位置」に在るとして、此れから英国の季節が秋に向かえば、問題は消滅すると釈明。「今は此の状態が毎日約2時間続いているが、当初の試算通りで在れば、2~3週間で収まる。」としている。
此の37階建てのオフィスビルは、2014年3月に完成予定。其のデザインに対しては地元住民から賛否両論が寄せられており、中には「其のずんぐりした姿が、街の景観の汚点になる。」という厳しい声も上がっている。
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【20フェンチャーチ・ストリート】
写真を見ると、確かに同ビルの外壁は凹面鏡状態で、太陽光を収斂してしまうというのは理解出来る。水が入ったペット・ボトルやら自動車のアルミ・ホイールやらで、所謂「収斂火災」が発生した事例は聞き及んでいたけれど、此のビルも抜本的な対策を講じないと、秋から春は何とかなっても、来年の夏が訪れたら、又、同様の問題が起こる事だろう。
秋に向かえば事態は収束するって、今後二度と夏が来ないならまだしも、ふざけたコメントだと思いました。
いっそこのビルごと可動式にして、太陽光を受けない方向に自動で回転するようにしたらいいかも。
此れだけのビルを手掛けるのですから、優秀な設計士だと思うのですが、形状を考えれば素人の自分でも、「凹面鏡みたいになる心配はないのかなあ?」というのが頭を過ると思うのですが・・・。
優秀過ぎると、自分の能力を過信してしまい、安直なミスを犯してしまうという例なのかも。
災い転じて福と為す・・・発想の転換というのは大事な事で、マイナス要素をプラス要素に転じるというのは面白いですね。唯、焦点の変動や日照時間の増減等、不安定要素をどうするかというのが問題になって来るかもしれません。
虫眼鏡で蟻を焼く・・・自分も小学校の低学年の頃に遣りました。自分自身を振り返っても、子供って残酷な面が在ったりします。
「ニューズウィーク」に迄取り上げられていましたか。最早、世界的なニュースとなった訳ですね。敢えて良く解釈すれば、莫大な広告宣伝費を支払わずに、世界的に有名な構築物となったとも言え、そうなると“適切な処置”を取った上で、マヌケ様が書かれていた様に、名所として売り出すのも一つの手。
「そして父になる」は、観たい映画の一つです。テーマに強い興味が在るので。