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「米州、窒素吸入で死刑執行へ ~『苦痛無い。』主張に『根拠無し。』批判も」(11月28日、東京新聞[夕刊])
米南部アラバマ州で来年1月、窒素吸入による死刑執行が実施される見通しとなった。英医学誌は、世界初としている。米国の死刑で40年以上使われる薬物注射は失敗が相次ぎ、死刑囚が苦しむ事例が発生した為だ。擁護派は「窒素吸入なら、苦痛が無い。」と主張するが、「根拠は無く、情報開示も不充分だ。」との批判も出ている。
米国で薬物注射による死刑執行が始まったのは1982年。筋弛緩剤等を注射するのが一般的だ。だが、製薬会社は製品が死刑に使われるのを嫌い、流通を制限。注射の担当官の技術が未熟で、失敗する事例も起きている。
昨年11月には、アラバマ州で殺人罪で有罪となった50代のスミス死刑囚が、寝台に数時間固定され、何ヶ所も針を刺されて、著しい苦痛を経験。「再び薬物注射による死刑執行をしない事。」等を求めて訴訟を起こし、「問題を避ける現実的な手段は、窒素吸入だ。」と主張した。
窒素は空気の78%を占める気体で、高濃度では酸欠を起こす。労災事故の事例から、苦痛を略感じず死亡に到ると見られ、少数の州が死刑への利用を認めた。一方、獣医学会は動物の安楽死指針で、一部の哺乳類に付いては苦痛を引き起こす為、「許容出来ない。」とする。
米法曹協会によると、アラバマ州のアイヴィー知事は裁判所の判断に従い、スミス死刑囚に関して窒素吸入を使った執行期日を設定。顔にマスクを装着させ、窒素を流す方法だが、州が開示した手順書は黒塗りが多く、1例目は「新手法の実験台になるのでは。」と懸念されている。州内に瓦斯を供給する一部業者が、窒素瓦斯供給を拒否した。」とも報じられた。
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「死刑」に関しては、当ブログでも過去に何度か取り上げて来た。人の死に関わる事柄なので、死刑に関して賛否両論在るのは自然な事と思っているが、個人的には「死刑制度に賛成。」というスタンスは変わらない。其の理由としては、「どういう事情が在るにせよ、他者の命を“不法”且つ“不当”に奪った者は、自らの命を以て償うべきで在る。」と考えるので。「自分にとって近しい人が、他者によって殺害されたら、其の人物が生き続けるという事は、とても耐えられない。」という思いも在る。「其れでは、『目には目を歯には歯を』という“同害報復”ではないか。」という批判が在るのは重々承知しているけれど・・・。
死刑制度に付いて論じられる時、「冤罪の可能性が零では無い限り、死刑制度は廃止すべきだ。」という声が在る。冤罪は絶対に許されてはならないし、死刑の判決に関しては軽々に下されてはならないと思っている。でも、「死刑は残酷だ。」とか「執行時、被執行者(=死刑囚)に苦しみを与える手法は許されない。」といった声には、とても疑問を感じる。「『残酷だ。』とか『苦しみを与える手法は許されない。』とかと言うけれど、『死刑囚は、“残酷且つ苦しみを与える手法”で人を殺めたのではないのか?自分は何をしても許されるが、自分が同じ事をされるのは許さない!!』というのでは、余りに身勝手。」と、どうしても思ってしまうので。
今回のスミス死刑囚の場合、自身が死刑に処せられる事自体を拒否している訳では無く、「苦痛の無い手法で、死刑を執り行って欲しい。」という事の様なので、其の点では理解出来る。「死刑制度自体は存続させるべきだが、其の手法は可能な限り苦しみを取り除く。」というのは、決して間違った事では無いだろう。