時代の変化により、TVドラマや映画、小説等の設定として使い難い物が出て来る。「絶対に使えない。」という訳では無いが、「使う事は、現実的に難しい。」という物だ。例えば「『街中に、監視カメラがこんなにも多く設置されている現代。』に在っては、『事件の犯人が、其れ等を完全に擦り抜けるという設定。』は、余り現実的とは言えない。」だろう。
「登場人物がタクシーに乗り込んだ際、車内に掲示されている運転手の“乗務員証”で、名前や顔を確認する。」という設定、TVドラマ等では良く見掛けた。「其の乗務員証から得られた情報が、後に大きな意味合いを持つ事になる。」なんていうのも、結構在ったっけ。将来的にはそういう設定も、現実的では無くなりそうだ。
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「バスやタクシー運転者の名札、掲示義務を廃止へ プライヴァシーに配慮」(4月8日、朝日新聞)
バスやタクシーの車内に設置されている運転者の名札に付いて、国土交通省は事業者に掲示を義務付ける事を止める。タクシーでは、併せて掲示を求めて来た顔写真の見直しも検討する。何れもプライヴァシー意識の高まりを受けた物で、国交省は近くパブリック・コメントを募って、関係省令を改正し、今夏を目途に施行する方針だ。
道路運送法に基づく省令では、バスやタクシーの運転者の氏名を「旅客に見易い様に掲示しなければならない。」と定められている。バスでは車内の高い位置に名札を掲げたり、タクシーでは乗客から見える所に証明書を置いたりしている。運転者に責任感を持たせ、乗客が利用した車両を特定し易くする為だ。
更にタクシーの証明書では、顔写真を載せる様決められている。トラブルが起きた際の特定を容易にする事で、責任をより明確化する狙いが在ると言う。唯、働き手のプライヴァシー保護や、客が理不尽な要求をするカスタマー・ハラスメントを防ぐ観点から、必要性が疑問視される様になっていた。
改正後は、運転者の氏名を掲示しなくなる事業者を想定し、表示が義務化されている車両の識別番号等で、乗客が利用した車両を把握出来る様にする。タクシーの運転者の顔写真に付いては、「普段は客から見えない場所に保管する。」といった代替策を検討する。
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昔は「客に横柄な言動をしたタクシーの運転手の乗務員証を確認し、所属する会社にクレームを入れる。」という話を見聞した。自分はクレームを入れた経験は無いけれど、「入れたくなる気持ちが理解出来る様な、実に不快な経験をした。」事は在る。
だから、車内に運転手の名札等を掲示する意味合いが“在った”とは思うのだけれど、運転手のプライヴァシー保護、そして何よりも昨今酷くなった“カスタマー・ハラスメント”を考え合わせると、今回の廃止という流れは「仕方無いのだろうな。」と思う。
渡瀬恒彦氏が、「元警視庁の敏腕刑事という経歴を持つタクシー・ドライヴァー。」として主演していたTVドラマ「『タクシードライバーの推理日誌』シリーズ」【動画】。「夜明日出夫(よあけ ひでお)」という変わった名前だった事から、タクシーに乗り込んだ客が運転手の“乗務員証”を目にして、「変わった名前だねえ。」と言うのが“御決まり”だったけれど、将来的には再放送を見て「運転手の名前を晒すなんて、全く理解出来ない。」と思う人も出て来るのでは?