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・“魔法の鼻を持つ犬”と共に、教え子の秘密を探る理科教師。(「名のない毒液と花」)
・「死んでくれない?」。鳥が喋った言葉の謎を解く高校生。(「落ちない魔球と鳥」)
・定年を迎えた英語教師だけが知る、少女を殺害した真犯人。(「笑わない少女の死」)
・殺した恋人の遺体を消し去ってくれた、正体不明の侵入者。(「飛べない雄蜂の嘘」)
・ターミナル・ケアを通じて、生まれて初めて奇跡を見た看護師。(「消えない硝子の星」)
・殺人事件の真実を掴むべく、ペット探偵を尾行する女性刑事。(「眠らない刑事と犬」)
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一時期、「ゲームブック」というスタイルの本が人気を集めた。通常の小説は「著者が意図した通りの展開で物語が進み、著者が意図した通りの結末で終わる。」けれど、ゲームブックの場合は「幾つも設けられた“選択肢”を読者が次々と選ぶ事で、ストーリー展開も結末も、全く異なる。」という物。だから、「選択肢の選び様により、幾つものストーリーが楽しめる。」というのが売りだった。
今回読了した「N」(著者:道尾秀介氏)は、ゲームブックの様な遊び心を持った作品。上記の6つの章(短編小説)で構成されているのだが、どういう順番で章を読むかは、読者に委ねられている。だから、可能性としたら「720通り」(6X5X4X3X2X1)の“読み進め方”が在る訳だ。
「章と章の物理的繋がりを無くす為、一章置きに上下逆転させた状態で印刷されている。」という手の込み様で、章によって本自体を逆様にして読む必要が在る。本を逆様にしてもタイトルが同じになる様、「N」というタイトルにしたのだろう。
1つ1つの章で話が完結しているのだけれど、他の章でも同じキャラクターが登場しており、全く無関係な訳では無い。でも、章が異なると、其のキャラクター達の“別の顔”が見えて来て、そういう意味での面白さは在る。
唯、全体的に言えば、敢えてこういうスタイルを取った意味合いが、余り感じられない。もっと言ってしまうと、「章を読む順番を何度も変えて迄、読みたいと思わせる作品では無い。」のだ。少なくとも自分の場合は、「自分が選んだ順番1回だけで、もう充分。」だ。強いて言えば、良かったのは「消えない硝子の星」、そして“人間関係の意外性”ならば「眠らない刑事と犬」という感じ。
総合評価は、星2.5個とする。