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「マンションの一室で、生後間も無い赤ん坊を残して主婦が惨殺。」、「学校での苛めを苦にした中学生が、自宅マンションのベランダから飛び降り自殺。」、「火遊びが発端となった火事で、留守番をしていた幼い兄弟が焼死。」、「独居老人が、死後半年を経過した腐乱死体となって発見。」。4ヵ月強の間に或る市で発生したこれ等の事件には、全く何の関連性が無かった。事件の種類は言うに及ばず、場所もバラバラだし、発生時刻もまちまち。しかし、唯一点だけ共通点が在った。それは、全てビルの七階で発生したという事。
「七階が存在しているからこそ、事件の発生率が高まった。」と判断した市役所では、市内の全てのビルから早急に七階を撤去する方針を打ち出す。六階の上がいきなり八階となり、七階は存在しなくなると言うのだ。その方針に従い、七階から退去する住民達。が、中には「七階に住む権利を守り抜く。」として「七階護持闘争」に踏み切る住民も居た。そして・・・。
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三崎亜記氏の新刊「廃墟建築士」は「七階闘争」、「廃墟建築士」、「図書館」、そして「蔵守」という4つの短編小説で構成されており、冒頭の梗概は「七階闘争」の物で在る。この他に、「廃墟に癒しを求める人が増えた結果、最初から廃墟にする目的で建物が造られる時代を描いた『廃墟建築士』。」、「深夜に飛び回る本達を調教する女性を描いた『図書館』。」、「意識を持った蔵が語り手として登場する『蔵守』。」と、この短編集では全て不思議な建物が登場。
デビュー作の「となり町戦争」以降、非日常世界を描いた作品を次々に生み出して来た三崎氏。非日常世界を描いた作品は他にも多くの作家達が著しているが、「『日常世界』の中に『非日常世界』をするっと滑り込ませる絶妙さ」に於いて、抜きん出た作家の一人が彼だと思う。又、その非日常世界に関しても、「良くもまあ、こんな所に目を付けたなあ。」と思う程のユニークな着眼点。
「嘗て実用に使われた建物を『見做し廃墟』と呼ぶ一方で、最初から廃墟にする目的で建てられた建物を『第一種廃墟』として呼び、それが高く評価されている。そんな社会で、廃墟として申請し乍ら、実際には人を住まわせている『偽装廃墟』が明らかとなり、大問題化して行く。」というストーリーの「廃墟建築士」には、4年前に露呈した「構造計算書偽造問題」への痛烈な皮肉が込められている。
4作品がそれぞれ異なったテーストを有しており、「蔵守」なぞは何処となく宮沢賢治氏の世界を自分には感じさせた。総合評価は星3.5個。
「マンションの一室で、生後間も無い赤ん坊を残して主婦が惨殺。」、「学校での苛めを苦にした中学生が、自宅マンションのベランダから飛び降り自殺。」、「火遊びが発端となった火事で、留守番をしていた幼い兄弟が焼死。」、「独居老人が、死後半年を経過した腐乱死体となって発見。」。4ヵ月強の間に或る市で発生したこれ等の事件には、全く何の関連性が無かった。事件の種類は言うに及ばず、場所もバラバラだし、発生時刻もまちまち。しかし、唯一点だけ共通点が在った。それは、全てビルの七階で発生したという事。
「七階が存在しているからこそ、事件の発生率が高まった。」と判断した市役所では、市内の全てのビルから早急に七階を撤去する方針を打ち出す。六階の上がいきなり八階となり、七階は存在しなくなると言うのだ。その方針に従い、七階から退去する住民達。が、中には「七階に住む権利を守り抜く。」として「七階護持闘争」に踏み切る住民も居た。そして・・・。
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三崎亜記氏の新刊「廃墟建築士」は「七階闘争」、「廃墟建築士」、「図書館」、そして「蔵守」という4つの短編小説で構成されており、冒頭の梗概は「七階闘争」の物で在る。この他に、「廃墟に癒しを求める人が増えた結果、最初から廃墟にする目的で建物が造られる時代を描いた『廃墟建築士』。」、「深夜に飛び回る本達を調教する女性を描いた『図書館』。」、「意識を持った蔵が語り手として登場する『蔵守』。」と、この短編集では全て不思議な建物が登場。
デビュー作の「となり町戦争」以降、非日常世界を描いた作品を次々に生み出して来た三崎氏。非日常世界を描いた作品は他にも多くの作家達が著しているが、「『日常世界』の中に『非日常世界』をするっと滑り込ませる絶妙さ」に於いて、抜きん出た作家の一人が彼だと思う。又、その非日常世界に関しても、「良くもまあ、こんな所に目を付けたなあ。」と思う程のユニークな着眼点。
「嘗て実用に使われた建物を『見做し廃墟』と呼ぶ一方で、最初から廃墟にする目的で建てられた建物を『第一種廃墟』として呼び、それが高く評価されている。そんな社会で、廃墟として申請し乍ら、実際には人を住まわせている『偽装廃墟』が明らかとなり、大問題化して行く。」というストーリーの「廃墟建築士」には、4年前に露呈した「構造計算書偽造問題」への痛烈な皮肉が込められている。
4作品がそれぞれ異なったテーストを有しており、「蔵守」なぞは何処となく宮沢賢治氏の世界を自分には感じさせた。総合評価は星3.5個。

現実的には在り得ない事と判ってはいても、読み進めて行く内に日常世界との乖離が薄れて行く。三崎氏の筆力の高さ故なのでしょうか。「となり町戦争」に次ぐ長編を読みたい所です。
「エアXX」って表現はポピュラーになりましたね。昔はこの手の事って、パントマイムと呼んでいた様に思いますが。
想像とか夢を見ることがあります。 人間なんてもろいもの。 けれど落下しても低層階なら植え込みやエントランスのひさしがクッションになって助かるかも。 そういえば昔、爆撃機から落下して助かった人の話を思い出た。 高い木の枝と積雪とその下の落ち葉の層がクッションとなって軽傷で済んだとか。 防災訓練の怪我人役はいやだけど、あの空気のクッションに一度落下してみたいとか、もうすぐ会社の春の防災訓練なので変なことを想像してみたりするのですが。 大友克弘の「童夢」を読んだ時や、軍艦島や廃墟の写真集を見たりして夢を見たことがあります。 今人がいる場所とか過去に人がいて団地や建物自体が生きていて息吹が感じられたそういう場所には何か不思議な力があるような気がします。 サッカーのゴールやナイターでホームランの映像と同時にあちこちの部屋からどよめきが上がって、おお、見てる見てるという感覚とか、奥さんに言われてか、ベランダでタバコをふかしている人と目が合ってお互いに苦笑するとか、建物そのものが生きているような感覚にとらわれます。
ドバイに建築中のビル「ブルジュ・ドバイ」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%90%E3%82%A4)はその高さが818mという事で、台湾の「台北101」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E5%8C%97101)の509.2mを抜いて世界一の高さのビルになったとか。資料によると1909年時点で世界一の高さを誇ったのが「メトロポリタン生命保険会社タワー」ビルで、その高さが213mだったという事ですから、100年で4倍近くの高さになった事になりますね。天に届く構造物を作ろうとするも、神の怒りによって崩れてしまったとされる「バベルの塔」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%99%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%A1%94)。個人的には「これ以上、高さを競ってどうするの?」という思いが在るのですが。