ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「読者諸君」、「嗚呼、何という事でしょう。」、「~ではありますまいか。」等の表記に心が疼く方は必読

2011年12月16日 | 書籍関連

幼少時、玩具や御菓子は中々買ってくれない両親だったが、本に関しては比較的惜しみ無く買ってくれた。其れも在って本が大好きになり、学校や近所の公民館の図書館で乱読していた自分。今もそうだが、昔からミステリーが大好きで、小学生の頃は子供向けに刊行された「シャーロック・ホームズ・シリーズ」や「少年探偵団シリーズ」等を何度も何度も読んだもの。4年前の記事「押入れの中から・・・」に写真入りで記述した様に、当時の本は“宝物”として少なからず保管している。

 

「読者諸君」、「嗚呼、何という事でしょう。」、「~ではありますまいか。」等の表記に、思わず心が疼いてしまう中高年は多い事だろう。今からウン十年前、夢中になって読んだ「少年探偵団シリーズ」で多用された表記だ。「小高い丘に在る薄気味悪い洋館」、「怪しい人間が出入りするサーカス」、「薄暗い街灯の下に佇む傴僂男」等々、今ならば「差別だ!」とか「偏見だ!」と非難されてしまうで在ろう設定や記述が溢れていたが、おどろおどろしさを感じさせる世界観は多くの子供達を魅了したのは事実。(夜に読んで、怖くてトイレに行けなかった子供も結構居た事だろう。)

 

「読者諸君」等の表記に心が疼いてしまった方々に御薦めしたいのが、「少年少女昭和ミステリ美術館」なる本。昭和20~50年代に刊行された子供向けミステリーの表紙絵で溢れ返っている。小説自体の面白さは言うも無いが、印象的且つ魅力的な表紙絵や挿絵が在ったればこそ、当時のみならず今でも、此れ等の作品を忘れられない人が多いのだと確信した。

 

子供向けの「シャーロック・ホームズ・シリーズ」や「少年探偵団シリーズ」が幾つかの出版社から刊行されていたのは知っていたけれど、改めて此の本で確認すると、自分が全巻読破したのは、「シャーロック・ホームズ・シリーズ」で言えば偕成社版、そして「少年探偵団シリーズ」はポプラ社版だった。

 

【「シャーロック・ホームズ・シリーズ」(偕成社版)1】

 

【「シャーロック・ホームズ・シリーズ」(偕成社版)2】

 

【「少年探偵団シリーズ」(ポプラ社版)1】

 

【「少年探偵団シリーズ」(ポプラ社版)2】

 

同じ出版社の同じシリーズでも装丁がコロコロ変わっていたり、同じ作品で在っても翻訳者によって雰囲気が全く違っていたりというのを、今回初めて知った。「シャーロック・ホームズ・シリーズ」を例に挙げると、山中峯太郎氏が翻訳したヴァージョンは大胆なアレンジがされている事で、実にテンポが良く、ユーモア小説如き味わいが在るとか。自分は横峯ヴァージョンも数冊読んでいるが、そう言われてみれば、そんな気もする。

 

大人の目で読むと、突っ込み所が結構在るのが、子供向けの「少年探偵団シリーズ」。「細かい部分に拘泥するよりも、如何に子供達に楽しんで貰えるか。」という事に、江戸川乱歩氏は重点を置いて書かれたのではないだろうか。

 

当時、思わず笑ってしまう記述が在ったりもしたが、此の本の中ではそういった記述が2つ紹介されている。其れを、最後に紹介する。

 

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たとえば「鉄塔の怪人」(ポプラ社版では「鉄塔王国の恐怖」)では、カブトムシ大王こと怪人二十面相がカブトムシの軍隊を作るため、さらってきた子どもにビニール製のカブトムシの被り物を着せて、すばやく動きまわれるように特訓するシーンがあるが、新兵の入隊初日にはみずから手本を見せるところが律儀である。

 

「こういうものを着て、虫のように走ったり、とんだりするんだから、なかなか、むずかしい。この鉄塔王国の将校のうちにも、わしだけの働きのできるやつは、ひとりもいないのだ。」などと言って、何度も失敗しつつ壁や天井を這いまわってみせ、汗ビッショリになりながら「どうだ、わかったか。カブトムシはこんなぐあいに動くのだ。」とのたまってみせるのだ。つまり、二十面相は毎日のようにひとりでこんな練習をしていたわけで、それを考えると、無性におかしい。

 

かと思えば、「魔法博士」(ポプラ社版では「悪魔博士」)では、小林少年たちを地底にとらえ、マジックを見せつけたあと、一緒に踊るシーンんが描かれる。

 

洞窟の中の、ふしぎなフォークダンスです。盆おどりです。ゆかいな音楽に、調子をあわせて、ひらりひらりと、おどったり、はねたり。そうなると、いちばん、はしゃぎまわるのは、ノロちゃんです。ノロちゃんは、目をむいたり、口をまげたりして、おどけたかっこうで、おどりだしました。」

 

とらえた側が踊りに誘い、とらえられた側が喜んでそれに応じるという、なんともシュールな光景。

 

乱歩はどんな気持ちでこれらのシーンを書いていたのだろう。乱歩というのはときどきヤケになっているんじゃないかと思うくらい暴走することがあって、大人ものでは「盲獣」の「芋虫ゴーロゴロ」や「鎌倉ハム大安売り」、「人間豹」の猛獣対決シーンなどが顕著な例だと思うのだが、少年ものでもその癖が出たのだろうか。それとも、計算の上で書いていたのだろうか。

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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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なつかしい! (spade)
2011-12-16 13:14:20
自分もファンでした!
東京勤務の頃、四谷のポプラ社とサンミュージック前は感慨深かったです。
前に日本映画チャンネルで探偵が岡田英次氏のバージョンを見たことがあります。チャチな特撮がシュールでした。
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>spade様 (giants-55)
2011-12-17 03:01:27
書き込み有り難う御座いました。

子供の頃に読んでいた本、出版社名を見ていると、今はもう無い所が結構在ったりします。本作りに「良心」を感じる所程、其の傾向が強い気がして、非常に残念。
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