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小学1年の時の夏休み、母と2人で旅をした。其の後、私は、母に捨てられた。
ラジオ番組の賞金欲しさに、或る夏の思い出を投稿した芳野千鶴(よしの ちづる)。其れを聞いて連絡して来たのは、自分を捨てた母の“娘”だと名乗る芹沢恵真(せりざわ えま)だった。此の後、母・内田聖子(うちだ せいこ)と再会し、同居する事になった千鶴だが、記憶と全く違う母の姿を見る事になって・・・。
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町田そのこさんの小説「星を掬う」を読了。彼女の作品を読むのは、第18回(2021年)本屋大賞を受賞した「52ヘルツのクジラたち」以来。
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・若年性認知症:65歳未満で発症する認知症。
・毒親:“毒になる親”の略で、毒と比喩される様な悪影響を子供に及ぼす親、子供が厄介と感じる様な親を指す俗的概念。
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「小学1年の夏休みが終わる頃、30歳の母・聖子は千鶴を捨てた。其れから22年が経ち、生きる事に希望を持てなくなった彼女は、52歳となった母と再会する事になるが、其の母は若年性認知症を罹患していた。」というストーリー。
「娘を捨てる直前、其の娘だけを連れて、1ヶ月程の旅をした母。」には、どういう思いが在ったのか?其の真相が明らかとなった時、千鶴がどんなに衝撃を受けたかは想像するに難く無い。でも、其の真相に隠された“真の理由”を知った時の千鶴の思いも又、大きな衝撃を受けた事だろう。前者が“マイナスの衝撃”ならば、後者は“プラスの衝撃”という違いは在るにせよ。
“毒親”というのも、「星を掬う」のテーマの1つだろう。「“真の毒親”に苦しめられている者。」が存在する一方で、「自身の不幸を慰撫したいが為だけに、親を毒親と事に見做している者。」も存在する。
又、「第三者の身勝手さに憤りを感じるも、第三者から『自分も、全く同じ身勝手さをしている事。』を指摘され、気付く。」というのも、良く在る話だ。人間とは、そういう生き物なのだろう。
人間の持つ“嫌な部分”が、幾つも描かれている。特に「終盤で描かれる“2人の男性”の言動。」は、反吐が出る程に不快。結末で、少し救われた感は在るが。
総合評価は、星3.5個とする。