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「消える動物園の“主役” 高齢化で止まらない減少」(7月13日、上毛新聞)
群馬県内の動物園で、動物の高齢化が進行している。全国の施設でも象や虎等が高齢化し、減少に歯止めが掛からない。野生動物の取引制限や価格の高騰等で新たな動物の確保が難しくなる中、動物園同士で連携して、赤ちゃんの誕生を目指す取り組みも広がっている。
桐生が岡動物園(桐生市)では4月、アジアゾウ「イズミ」が、雌では国内最高齢の推定61歳で死んだ。タイで生まれ、約53年間飼育された、園の人気者だった。市内の主婦(25歳)は、「小さい頃から見ていたアイドルだった。」と残念がった。
市民からはイズミに代わる象に期待する声も上がるが、新たに飼うには難しい制約が在る。アジアゾウは輸出入を規制するワシントン条約で絶滅危惧種に指定され、繁殖を前提に雄と雌のペアでの飼育が求められるからだ。
来年度ミャンマーから4頭の象を迎え入れる予定の札幌市の円山動物園は、象舎の建設費用として約30億円、経費として毎年2,000万円以上を見込んでいると言う。
桐生が岡動物園でも新たに飼うには施設の大規模な改修が必要で、購入や輸送に掛かる経費もネックになる。斎藤隆浩園長は、「多くの市民に楽しんで貰える動物園になる為、様々な選択肢を調査、検討して行きたい。」としている。
富岡市の群馬サファリパークでも、一部の動物が減少している。アフリカゾウは1979年の開園時は8頭だったが、老衰や病気などで減り続け、3年程前に居なくなった。ベンガルトラもピーク時は10頭以上居たが、現在は3頭のみ。犀も減少傾向だ。
高齢になると繁殖も難しいが、一方で海外から若い個体を連れて来るのも容易では無い。背景には、新興国で動物園の建設が相次ぎ、動物の価格が高騰している現状が在る。動物の対価に加え、相手国の自然保護基金等にも支出する必要が在る。
同園の川上茂久園長は「事態は深刻で、将来的に一部の動物が見られなくなるかもしれないという危機感を抱いている。」と話し、希少種の保存を続けて行く為にも、国内繁殖が重要と指摘する。
繁殖のチャンスを広げ様と、複数の施設間で動物の賃貸契約「ブリーディング・ローン」を結ぶ事例も増えている。群馬サファリパークはチーター9頭の内、其れ其れ1頭を多摩動物公園(東京都)、姫路セントラルパーク(兵庫県)、秋吉台サファリランド(山口県)に貸し出している。一方、姫路からは雌1頭を預かっていて、赤ちゃん誕生を目指す。
和歌山県の動物園、アドベンチャーワールドでは6月上旬、2年振りとなるアミメキリンの赤ちゃんが誕生した。父親は、桐生が岡動物園からブリーディング・ローンによって貸し出されている16歳の雄だ。担当者は「動物を飼育する施設の役割の一つに、種の保存が在る。今後も、動物達にとって良い環境を作りたい。」と話している。
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間近で動物達を見るのが好きで、動物園には結構足を運んでいる。珍しい動物を飼育している所も増えたが、猿やキリン、象等、定番の動物達を見ると何かホッとするし、ついつい時間を忘れて見入ってしまう。
此処何年か、そういう定番の動物達の檻を覗くと、個体数自体が少なかったり、「体調管理の為、現在は見られません。」といった“不在表示”がされていたりする事がチラホラ見受けられていたが、今回の記事にも在る様に、動物園の世界にも高齢化の波が押し寄せている事が原因だった訳だ。
新興国の影響で、我々が昔から安価に食していた物が高騰。動物園の動物達も新興国の影響が小さくない様だが、「我々は動物園が必要だが、新興国は動物園の建設を遠慮して欲しい。」とは言えないし、難しい問題で在る。