ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「臨床真理」

2009年06月07日 | 書籍関連
第7回「このミステリーがすごい!」大賞(2008年)を受賞した作品「臨床真理」(著者:柚月裕子さん)を読み終えた。購入する前に世評を確認しようとネットでタイトル名を入力&検索するも、何故か引っ掛からない。仕方が無いので著者名で検索すると、幾つも関連記事が引っ掛かった。何の事は無い、自分は一般的な用語の「臨床心理」で検索していたのだ。この作品のタイトル「臨床真理」は「臨床心理」と、そして「真理を追求する。」という意味合いを重ね合わせた造語なのだろう。

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臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という20歳の青年を担当する事になる。司は、同じ福祉施設で暮らしていた少女の自殺を受け容れる事が出来ず、美帆に心を開こうとしなかった。それでも根気強く向き合おうとする美帆に、司は或る告白をする。少女の死は他殺だと言うのだ。その根拠は、彼が持っている特殊な能力によるらしい。美帆はその主張を信じる事が出来なかったが、司の治療の為にも、調査をしてみようと決意する。

美帆は、嘗ての同級生で現在は警察官で在る栗原久志の協力を得て、福祉施設で何が起こっていたのかを探り始める。しかし、調査が進むにつれ、悍ましい出来事が明らかになる。
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ネタバレになるので詳細を書くのは控えるが、この作品は「福祉を巡る2つの問題」がテーマとなっている。どちらも嘗てニュースで取り上げれた内容。小説内で登場する福祉施設で何が起こっていた(起こっている)のかや、又、犯人が誰なのかは、恐らくミステリー好きならば早い段階で察しが付くと思う。その意味では在り来りとも言えるが、ストーリー展開には魅せれらる物が在り、一気に読み進んでしまった。

主人公の美帆には統合失調症を抱える弟が居た。「過去形」で記した理由は小説で確認して戴くとして、その「弟に対する幼児期の思い出。」と「病気を発症して以降の弟に対する自身の接し方への自虐的な思い。」との狭間で苦しみ続ける美帆の気持ちが、彼女自身に身を置き換えると何とも遣る瀬無い訳だが、実際の当事者はそれ以上の思いを抱えているのだろう。

信じていた人間から裏切られ、絶望してしまう。又は、不信感を覚えていた人間から救われて、「他者を信じよう。」と前向きになる。善意や悪意、様々な思いが交錯している人間社会を、やや大映ドラマチックに描いている。

総合評価は星3.5個

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1 コメント

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こんばんはです。^±^ノ (てくっぺ)
2009-06-09 01:31:31
福祉の問題を取り上げたことは現代の問題にマッチしてますよね。

まだまだ現状では法学上でも、穴がところどころで開いているような気がします。
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