岸田文雄首相が、「月内に決定する中期防衛力整備計画(中期防)で示す2023年~2027年度の5年間の防衛費の総額を『43兆円規模』とする考え。」を明らかにした。現行の中期防(2019年~2023年度)の防衛費の総額は「27兆4,700億円程度」で、43兆円規模というのは、約1.56倍の大幅増額となる。
今回の防衛費大幅増額に付いて、手放しで賛成出来ない。こう書くと“相手を揶揄する事だけが目的の人”からは、「他国から攻め込まれても、座して死を待つと言うのか?だから、パヨクは御花畑なんだよ。」と言われそうだが、自分は“防衛費の増額自体”を否定しているのでは無い。ロシアや中国、北朝鮮等、傍若無人な国が存在している以上、自衛力を高めるのは重要だ。だから、そういう目的での防衛費を“必要な範囲”で満たす事には反対していない。
唯、其の防衛費の“中身”が大事。「単に武器を買い漁り、装備しさえすれば良い。」という物では無いから。自分の中では色々考えていたのだが、昨日のラジオ放送で自分と全く同じ主張が在ったのに加え、「確かにそうだ!」と思わされる主張も在ったので、其れを加味して記す。
以前から何度も書いている様に、「歴史とは年号や出来事を記憶する“だけ”の学問では無く、歴史上の出来事や人物から色々学び取り、同じ様な過ちを繰り返さない様に活かす為の学問でも在る。」というのが自分の考え。
日本が負け、多くの犠牲を生んだ「太平洋戦争」からも学ぶ事は多い。「他国の脅威を声高に叫び、防衛費の増額を重ねた結果、太平洋戦争に突入した日本。」だが、軍部を含めた国の上層部に“冷静な分析力と判断力”を有した者が、果たして何れだけ居ただろうか?
「世界のを潮流を考慮する事無く、“大艦巨砲主義”に捉われて大和等を作ったが、“空”からの攻撃であっさりと沈没させられた。」事は、「世界なんかどうでも良い。自分達が『素晴らしい!』と思う物を作り上げれば、必ず世界中に売れる。」と、売れない“ガラパゴス携帯”を作ったのと似ている。
防衛と言えば「武器を買い漁って、装備する事。」と“しか”考えていない人も居るが、“サイバー戦争”が一般化して来た現代では、サイバー戦争に対応出来る人材を育成する事も重要で在り、武器だけに固執するのは、世の中の潮流を分析する事無く、大和やガラパゴス携帯作りに前のめりになったのと一緒。
「自分達こそが、唯一無二的に正しい。」という思い上がりが蔓延り、丁々発止の交渉力が御座なりにされた大日本帝国。机上の空論に終始する事無く、相手の事を徹底的に分析&判断”し、交渉力を高めていれば、不毛な戦争は避けられたかも知れない。そういう交渉力を高める事も、又、防衛の重要な要だ。
食料自給率が低く、開戦によって食糧の輸入が止められ、結果的に兵糧攻めされる事と相成った大日本帝国。多くの国民は、食べる物に事欠く日々を送る。又、戦地では杜撰な兵站も在って、戦う以前に餓死する者も少なく無かったと言う。防衛費を大幅に増額し、武器を買い漁ったとしても、食料の輸入が止まってしまったら、二進も三進も行かなくなるのは明らか。防衛には、「食料自給率を高める。」という事も考慮しないといけない。
イソップ寓話の1つ「牛と蛙」の様に、「自らの大きさを誇る余り、最後には身を滅ぼしてしまう。」事も在る。防衛費も同様で、「他国と張り合い続ければ、軈ては防衛費の負担が苦しくなり、自国が傾いてしまう。」事に留意しなければならない。国内の無駄を徹底的に省いた上、防衛費の増大は必要最低限に留める。
又、「アメリカの言い値通りに武器を購入する(例えば「本来は500億円の武器を、言い値の1千億円で購入する。」とか。)のでは無く、“適正価格”で購入する。」等、舐められない態度で臨む事。
兵器の購入は使うためではなく、攻め込ませないための抑止力。
そういう考えもあると思いますが、giants-55さんも書いておられるように、兵器に偏ったバランスを欠いた抑止力は、そもそも抑止力にならず、どちらが経済的に耐えられるか、経済戦争の様相だと思っています。
相手が侵略を思いとどまるほどの兵力を持つためには、相手の兵力を上回っていなければ意味がありませんが、日本がそれを持てば相手はそれを脅威ととらえ、さらに上回る兵力を持とうとするでしょう。
そうなると結局行きつく先は経済的破綻か、核抑止しかないわけですが、その一線を仮に越えると、狭い国土に人口の密集した日本は圧倒的に不利です。
いつ起きるかわからない「もしもの戦争」の為に庶民(あえて国民とは書きません)が重税にあえぐ事態より、食糧の自給率向上を含め、目の前の庶民の貧困という危機からの脱却を優先するべきだと思うのですが。
そういう発想は今の政治家や官僚といった(上級)国民にはないのでしょうかねえ(苦笑)。
「仮に中国と“防衛費増額合戦”をした所で、同国の歳入を考えたら、とても太刀打ち出来ない。そんな不毛な争いをするのでは無く、最低限の自衛力をキープした上で、戦争を回避する為の強かな交渉力をブラッシュアップすると共に、食料自給率アップ等、国内の“底上げ”を図るべき。」という主張を過去に見聞しましたが、全く其の通りだと思います。
今の政治家、此れは日本だけに限りませんが、「全く根拠の無い陰謀論を振り翳し、自分にとって不都合な事には『フェイクだ!』と叫ぶ。」様な、悪い意味での“漫画脳”の者が少なく無い現実。そういう輩に限って私利私欲の充足に躍起となり、自らの身を切ろうとはしないのですから本当にどうしようも無いし、そういう輩を盲目的に信奉している連中が多いのにも、何とも言えない不気味さを感じます。