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「作家の野坂昭如氏が死去 『火垂るの墓』で直木賞」(12月10日、共同通信)
「焼け跡闇市派」を自称し、小説「火垂るの墓」等で直木賞を受賞、作詞家やタレントとしても活躍した作家で元参院議員の野坂昭如(のさか あきゆき)さんが9日午後10時37分頃、心不全の為、東京都新宿区の東京医大病院で死去した。85歳。神奈川県出身。葬儀は近親者の密葬で行い、告別式を後日営む予定。喪主は妻・暘子(ようこ)さん。
1945年、少年時代を過ごした神戸で空襲に遭い、其の後、妹が亡くなった。コント作家、CMソング作詞家等で活躍し、1963年に「おもちゃのチャチャチャ」【動画】で日本レコード大賞童謡賞を受けた。*1
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「日本に於て、幼少期と少年期を太平洋戦争中に過ごした世代。」を、「焼け跡闇市派」と称したりする。野坂氏が口にした事で有名になった事で、広く使われる様になった言葉だが、自分の父親も正に其の世代だ。成長期、戦争で満足に食べられなかった事から、此の世代には若くして亡くなる人物が多い様に感じられ、我が父親も例外では無い。そういう意味では、85歳迄生きて来られた野坂氏は、長生きの部類に入るだろう。
此方に載っている様に、野坂氏は多くの“顔”を持っている。“マルチタレント”の走りと言って良い存在だろう。野坂氏には色々な思い出が在り、10年前には「恥ずかしい過去」という記事で取り上げたりもしている。今回の記事は、此の記事と重複する部分も結構在るが、「其れだけ自分にとって思い入れの深い人物。」という事で御容赦願いたい。
自伝“的”小説「火垂るの墓」は読んだし、アニメ【動画】に到っては何度見た事か。毎回毎回、同じ場面で涙した名作。童謡「おもちゃのチャチャチャ」同様、老若男女を問わず、広く知られた作品を残せたというのは凄い事。
タレントとしても、八面六臂の活躍を見せた野坂氏。「朝まで生テレビ!」【動画】(パロディー版【動画】も作られたっけ。)のパネリストとしても有名だったが、同じくパネリストを務めていた大島渚監督の真珠婚式パーティーで、2人が子供の様に殴り合っていたシーン【動画】は何度見ても笑える。
歌手としての顔も忘れられない。彼が歌った「黒の舟唄」【動画】は名曲だ。
個人的に最も印象に残っているのは、1976年、サントリーの「サントリーゴールド900」のCM【動画】で歌い踊る野坂氏。当時は不覚にも(?)「格好良い!」と思ってしまったりしたが、何と言っても歌詞が忘れられない。
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皆悩んで 大きくなった
(大っきいわ 大物よ)
俺も御前も 大物だァ
皆悩んで 大きくなった
(大っきいわ 大物よ)
俺も御前も 大物だァ
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「ギョエテ」は「ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ」、「シグレル」は「フリードリヒ・フォン・シラー」の事。「子供の頃、此のCMでソクラテスやプラトン等の名前を初めて知った。」と宮根誠司氏が言っていたそうだが、自分も全く同じ。当時の子供で、同じ経験をした者も多いと思う。(「サントリーオールド」のCMもそうだが、昔は“大人なCM”が多かった気がする。)
共に脳の病気を患い、長期間闘病生活を送っていた大島渚監督と野坂昭如氏。2年前に鬼籍に入った大島監督を追い、天へと旅立った野坂氏。「彼の世で又、子供の様に殴り合いをしているのだろうか。」と思うと、ついつい頬が緩んでしまう。合掌。
*1 今回初めて知ったのだが、「ハトヤ」のCMソング【動画】を作詞したのも野坂氏だとか。