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低視聴率に喘ぐワイドショーのスタッフの畑山圭介(はたやま けいすけ)は、母校の伝手で美人精神科医をコメンテーターとしてスカウトし様とする。が、行き違いから神経科の医師・伊良部一郎(いらぶ いちろう)と看護師・マユミが出演する事に。案の定、2人は放送事故寸前のコメントを連発するが、其れは暴言か、将又金言か!? (コメンテーター)
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奥田英朗氏の小説「コメンテーター」を読了。「『伊良部総合病院の息子。色白、デブ、マザコンの35歳の精神科医。「いらっしゃーい。」と甲高い声で患者を迎え、取り敢えず注射を打つ。神経は図太く、遠慮知らず。』という伊良部一郎。」と、「伊良部の助手を務める茶髪の若い看護師。美人だが愛想は無く、ミニスカート等、セクシーなナース服に身を包み、露出狂かと思われる位に肌を露出している。』というマユミ。」のコンビが、破茶滅茶な“治療”で患者を治して“しまう”。」という所謂「精神科医・伊良部シリーズ」の第4弾。
奥田氏は、同シリーズの第2弾「空中ブランコ」で第131回(2004年上半期)直木賞を受賞。第3弾の「町長選挙」が上梓されたのは2006年の事だから、17年振りの新作となる。人気シリーズにも拘らず、こんなにも長い間新作が上梓されなかったのは不思議だが、「人気シリーズだからこそ、新作を書き上げるのに苦労した。」という事なのかも。
「コメンテーター」は表題作でも在る「コメンテーター」を含め、5つの短編小説で構成されている。神経を病んでしまった5人の患者が登場するが、彼等は伊良部とマユミのエキセントリックな言動に戸惑い乍らも、精神的に極限迄追い込まれていた事から破茶滅茶な治療に従う。其の結果、症状が好転するのだから笑ってしまう。好い加減極まり無い伊良部だけれど、時に的を射た発言をスパッとしたり、何も考えていない様で、物事の真髄を的確に捉えている‟様に思えてしまう”のだから、本当に不思議な人物だ。
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広場恐怖症:略毎回、恐怖や不安を誘発する為、公共交通機関や、或いは広い場所や閉ざされた場所を避けている事が6ヶ月以上持続している、不安障害に含まれる精神障害。
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女子プロゴルファーの菅沼菜々さんが罹患している事で広く知られる様になった「広場恐怖症」が、作品内で取り上げられている。「広場恐怖症」という病名からは“広い場所を恐れる”というイメージが強く、「広い場所だったら開放的で、恐れる要素なんか無さそうだけれど・・・。」と思ってしまうのだが、怖い人は怖いのだろう。又、“広場”と付いているが、“閉ざされた場所を恐れる”という所謂“閉所恐怖症”も含まれるというのだから、誤解を生みそうな病名の気も。
過去の3作品と比べると、少し‟パンチ力”に欠ける感じもするが、面白い内容では在る。総合評価は、星3つとする。