ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「『火の鳥』シリーズ」のマイ・ランキング

2024年12月25日 | 書籍関連

ブログで過去に何度も書いている事だけれど、手塚治虫氏は敬愛する人物の1人。彼が描き上げた作品数は「全604作」とも言われるが、入手出来る範囲では、恐らく全部読んでいる。其れ等の作品から学んだ事は数多在り、我が人格形成に大きな影響を与えたのは間違い無い。自分にとって彼は、漫画家という存在に留まらず、偉大クリエーターで在り、思想家で在ると捉えている。

マイナーな漫画だけど好き」、「『人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わんかね。』」、「手塚治虫作品ベスト10」、「安達が原」、そして「一番結末が衝撃的だった手塚作品」等、手塚氏に関する記事をアップして来たが、今日は彼の代表作の1つで在り、個人的には「ベスト10の9位」とした「『火の鳥』シリーズ」を取り上げる。

「『火の鳥』シリーズ」の第1弾は、漫画雑誌漫画少年」の「1954年7月号~1955年5月号」に連載された「黎明編(漫画少年版)」で、此れ未完に終わっている。以降、連載を変え、全部で18編が存在する。此の他に、手塚氏自身が登場するエッセー短編漫画休憩 INTERMISSION」(初出:「COM」が存在するけれど、「飽く迄もエッセー。」という事で、18編からは外す事にした。全18編を、発表された順番に記すと、次の通り。

*****************************************************************
『火の鳥』シリーズ 全18編』

① 「黎明編(漫画少年版)」(初出:「漫画少年」)
② 「エジプト編」(初出:「少女クラブ」)
③ 「ギリシャ編」(初出:「少女クラブ」)
④ 「ローマ編」(初出:「少女クラブ」)
⑤ 「黎明編(COM版)」(初出「COM」)
⑥ 「未来編」(初出:「COM」)
⑦ 「ヤマト編」(初出:「COM」)
⑧ 「宇宙編」(初出:「COM」)
⑨ 「鳳凰編」(初出:「COM」)
⑩ 「復活編」(初出:「COM」)
⑪ 「羽衣編」(初出:「COM」)
⑫ 「望郷編(COM版)」(初出:「COM」)
⑬ 「乱世編(COM版)」(初出:「COM」)
⑭ 「望郷編(マンガ少年版)」(初出:「マンガ少年」)
⑮ 「乱世編(マンガ少年版)」(初出:「マンガ少年」)
⑯ 「生命編」(初出:「マンガ少年」)
⑰ 「異形編」(初出:「マンガ少年」)
⑱ 「太陽編」(初出:「野生時代」)
*****************************************************************

描かれた時代で言えば、"最古"は「エジプト編」で紀元前10世紀頃、そして"最も先"は西暦3404年の世界と描いた「未来編」。詰まり時間軸で考えた場合、「『火の鳥』シリーズ」は「エジプト編」で始まり、「未来編」が結末と言えるだろう。

時空を超えて存在する超生命体火の鳥は、其の血を飲めば、不老不死に成れる。と言われている。そんな火の鳥を"狂言回し"に、過去と未来を交互に描き乍ら「生と死」や「輪廻転生」という哲学的な問題を深く抉っているのが「『火の鳥』シリーズ」だ。

古今東西人類歴史で"戦い"が絶えないのは、偏に"人間のエゴ"が在るから。自身の利益のみを追い求めた権力者が、最後に行き着くのが「が不老不死」と言って良く、人類にとって"究極テーマ"なのだろう。

「『火の鳥』シリーズ」全18編の中から、マイ・ランキングを記す。

*****************************************************************
[「『火の鳥』シリーズ」のマイ・ランキング]

1位: 未来編
2位: 「鳳凰編」
3位: 「太陽編」
4位: 「復活編」
5位: 「黎明編(漫画少年版&COM版)」
6位: 「異形編」
7位: 「ヤマト編」
8位: 「宇宙編」
9位: 「望郷編(COM版&マンガ少年版)」
10位:「生命編」
11位:「乱世編(COM版&マンガ少年版)」
12位:「羽衣編」
13位:「エジプト編」 / 「ギリシャ編」 / 「ローマ編」
*****************************************************************

2位から6位に関しては、順位付けが難航した。何れも"マイナス要素"を見付け難く、無理無理に順位を付けたという感じだ。でも、1位は断トツで「未来編」。他作品を追随させない圧倒的なパワー有した作品で、「未来編」だけでも「生と死」に付いて十二分に考えさせられる事だろう。

*****************************************************************
「火の鳥 未来編」

西暦3404年、人類は25世紀を頂点として衰退期に入り、文明も芸術も進歩が少しずつ停止。人々は昔の生活や服装に許り憧れ抱く様に成り、既に30世紀には、文明は21世紀頃のレヴェル逆戻りしていた。地球及び人類は滅亡に在り、他の惑星に建設した植民地放棄し、地上は人間は疎か、生物が殆ど住めない世界と成っていた。人類は世界の5ヶ所に作った地下都市"永遠の都"事、メガロポリス「レングード」(旧ソ連)、「ピンキング」(中国)、「ユーオーク」(アメリカ)、「ルマルエーズ」(フランス)、そして「ヤマト」(日本)に移り住み、超巨大コンピューター自らの支配を委ねていた。然し其のコンピューター完璧な存在では無く、コンピューター同士で争いが起き、全体主義体制採る「ヤマト」と自由主義体制の「レングード」の対立から、核戦争勃発した。其の結果、対立関係とは無縁だった残りの3都市もが何故か超水爆で爆発し、地球上に5つ在った全ての地下都市が消滅。人類が滅亡してしまう。生き残ったのはシェルター山之辺マサト猿田ロックタマミのみだった。其の後、マサトの意識は体外離脱し、火の鳥により、「宇宙の構造と、人類の滅亡が生命の歴史のリセットを目的として実行された。」事を告げられ、生命を復活させ、正しい道に導くに"永遠の命"を授かる。他の者が次々と放射能の作用や寿命が尽きて死んで行く中で、マサトだけは永久に死ねない体の苦しみ、悶え乍ら生き続ける途方も無い時間をたった1人で過ごす中で、マサトは地球の生命の復活を追究し続け、軈て1つの答えに辿り着く
*****************************************************************

自分自身も、不老不死という物に憧れた時期が在る。「全く老いる事無く、絶対に死なないって、凄く良いな。」と。でも、自身の肉体は朽ち果てても、意識だけはずっと生き続けているが、自分以外の"生物"は全て絶滅してしまった中、たった1人で存在し続けなければいけないマサトの孤独絶望を此の作品で思い知らされ、考えがすっかり変わった。

以前、盟友小沢昭一氏との思い出を語っていた黒柳徹子さんが、「『(自分は)百歳迄生きる。』と言ったら、小沢さんに『長生きをすると、周りに誰も居なくなるよ。』と言われて、ワンワン泣いた事が在るんです。でも今日、其れはそうだなと思いました。もう小沢さんも居ないんだなと。1日1日を、大事に生きて行くしか無いわね。」と言ったのが、非常に印象に残っている。「不老不死と成っても、周りに誰も知り合いが居ないどころか、自分以外の生物が全く存在しない。」というのは、正に"生き地獄"だろう。


コメント    この記事についてブログを書く
« キダルト層 | トップ | 「赤ずきん、アラビアンナイ... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。