マーティ・キーナート氏に期待

楽天が球界への新規加盟を申請しているが、参入が認められる否かは予断を許さない所だろう。そんな中、参入が認められた場合という条件付きながらも、スポーツジャーナリストのマーティ・キーナート氏を新球団のＧＭに据えるとのニュースがあった。キーナート氏には、二つの意味で期待をしている。

一つは、日本プロ野球界にＧＭ制度を本格的に根付かせる端緒となって貰いたい。良く指摘される事だが、メジャーリーグではＧＭが長期的なチーム作りを担っている。「打力中心の打ち勝つチーム」とか、「投手力を中心に守り勝つチーム」の様に、具体的なチーム・ビジョンを掲げ、それに沿って戦力補強や選手育成を進めて行く。監督は、与えられた戦力＆方針を考慮した上で、自分なりに戦力分析を行ない、「この戦力であれば、今年はこのレベル迄はチームを持って行ける」という”ノルマ”をＧＭとすり合わせて決定する。このノルマは、監督だけに課されるのではなく、ＧＭにも、提供戦力の”期待値”という形で課されるという。公式戦が終わった後で、ノルマと結果を分析し、チーム成績が思わしくなかった場合には、どちらに責任が有ったかを明確化する。それに基づいて、ＧＭ又は監督の更迭が決まるというのが大前提に有る。（全てがこの大前提に準じているかと言われれば、答に窮する部分も有るが。）

翻って、日本プロ野球界の現状を見ると、責任の所在が全く好い加減で有ると言わざるを得ない。チーム不振の責任は、全て監督におっ被される事が多く、フロントが責任を取るケースは皆無と言っても良い。又、長期的なチーム・ビジョンがない為、監督が変わる毎に戦力構成や起用方針がガラリと変わるのが常。これでは、強いチーム作りも、魅力有るチーム作りも難しいと思える。

過去に、マリーンズがＧＭ制度を導入したものの２年で崩壊、現在ではブルーウェーブがＧＭ制度を敷いているが、今一つハッキリしたチーム像が見えて来ない気がする。

高校時代にキャッチャーとして鳴らし、プロからスカウトを受けた程の実力の持ち主だったキーナート氏。日本のプロ野球界に関する造詣も深く、太平洋クラブライオンズでは球団営業開発促進室長も務めていた実績も有る。”浪花節的”な部分も残しつつ、合理的なシステム作りに尽力して欲しい。

そして、もう一つ期待しているのは、上記した内容と重複する部分も有るのだが、球界のおかしな常識やスタイルをぶち壊して欲しいというもの。合併問題が取り上げられて以降、「球界の悪い部分＝ナベツネ的なモノ」という論調が主流を成している。「全てが全てナベツネが悪い」という極論には頷けないが、多くの部分でナベツネ的なモノが球界を硬直化させ、悪化させて来たのは確かだろう。唯、どうしても納得いかないのが、ナベツネを異常な迄に叩くマスメディアや世論が幅を利かしている反面、一見対極に在る様に思えて、潜在的には同根としか思えない”星野的”なモノが、これ又過剰に持ち上げられている現状なのだ。

星野仙一氏が持つ特異なキャラクターに魅せられるのは判らないでもないし、支持する人間が居る事を否定する気はない。唯、彼が過去や現在にわたって行なって来た言動の多くの矛盾に耳目を閉ざし、過剰な迄の英雄像を作り上げて行くマスメディアに不信感を持たざるを得ない。まるで、”提灯持ち”であるとしか思えないのだ。一番おかしいと思うのは、彼の”暴力性”を”熱さ”と捉え、それが絶対であるかの様な報道の数々に有る。

何故か、日本球界では星野氏を表立って批判する事は、タブー視されている気がしてならない。「長嶋さんや王さんだって、同じではないか？」という声もあろうが、チームが不振の際のバッシングや、プライベートな部分に踏み込んだ批判＆中傷記事には、それこそ人間性を否定する様なもの迄あった。星野氏に関して、そういった類のものが全く無かったとは言わないが、彼の本質的な問題点と思っている”暴力性”に付いては、不自然な程マスメディアは沈黙を守っているのだ。

そんな”不思議な”マスメディアの世界に在って、キーナート氏は、真っ向から彼の暴力性等の問題点を言及＆批判した事が有る。かなり、”圧力”がかかった様だが、「おかしい事はおかしいのだ」とばかりに立ち向かう氏の姿に、スポーツに携わる人間の”良心”を見た思いだった。＊１

あの舌鋒の鋭さや、既存の権威に阿らない姿勢を是非とも球界内部で発揮して、旧態依然とした不条理が蔓延らない世界に変えて行って欲しいものである。

＊１　キーナート氏が、ジャイアンツの抱える多くの問題点にも、痛烈に言及＆批判している事実を付け加えておきたい。自分はジャイアンツ・ファンではあるが、盲目的にジャイアンツが成している（いた）事を支持している訳ではないし、過去にも多く批判して来ている事を、御了解戴きたい。要は、誰であろうと、どんな事であろうと、悪いモノは悪いと思っているだけである(^o^;;;。