ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「神様のカルテ」

2012年02月28日 | 書籍関連

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栗原一止(くりはら いちと)信州の小さな病院「本庄病院」に勤務する、哀しむ事が苦手な内科医で在る。医師不足に苦しむ此の病院では、専門分野外の診療をするのが日常茶飯事なら、不眠不休で働き続けるのも日常茶飯事。

 

そんな栗原に或る日、母校の医局から誘いの声が掛かる。大学に戻れば休みも増え、愛する妻・榛名と過ごす時間も増える。最先端の医療を学ぶ事も出来る。だが、大学病院や大病院に行けば、「手遅れ」と見放された患者達と今の様に、精一杯向き合う事が出来るだろうか?

 

悩む一止の背中を押してくれたのは、高齢の患者・安曇雪乃さんからの思い掛け無い贈り物だった。

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現役の医師にして人気作家と言えば、「田口・白鳥シリーズ」等で御馴染み海堂尊氏の名前が一番に思い浮かぶのだが、今回読了した小説「神様のカルテ」を著し夏川草介氏も「現役の医師にして人気作家」という紹介をしても良いだろう。2009年に刊行された此の小説は同氏のデビュー作で在り、第10回小学館文庫小説賞を与えられた事で、「夏川草介」という名前を一躍有名にした。映画化もされ、第2弾も刊行されているというのに、今更乍ら読了というのは何とも面映ゆいのだが・・・。

 

本のには、此の小説を大絶賛する惹句が踊っている。「油断していると、涙が溢れてしまう。」、「心が洗われる様なとは、此の事!!」、「固く喰い縛った歯と歯の隙間から、嗚咽が漏れてしまう。」、「此れ程自然で計算高く無い感動を与えてくれたのは、此れ以外在りませんでした。」等々。しかし第1話(此の小説は、全3話で構成されている。)を読み終えた時点では、「何故、あんなにも高い評価が下されたのか?夏目漱石敬愛しているという一止の時代掛った口調には読む気を削がれるし、(同じ医師の)海堂作品と比べると深みが無いし。」と、全く評価出来ない内容だった。

 

首を捻りつつ先を読み進め、「高い評価の要因は、第2話以降に在ったのだな。」と独り言つ「医療現場が抱える問題」や「命と向き合うという事」等、本来は重々しく書かれるで在ろう事が、“ライト”とも思える書かれ方をしている。其れに、“本来の重さ”がボディー・ブロー如く、読み手にじわじわと効いて来るのだ。

 

帯に海堂尊氏が「現代日本の医療事情を、仄々と文学的に描いた良作。」という推奨文を寄せているが、此の小説の本質を的確に表していると思う。

 

総合評価は星3.5個


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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2012-02-29 12:37:46
ページ数が少なくても、分語調の語り口と物語の昭和な下宿の雰囲気が合わなかったのと、内科医というところで外科医のようなドラマチックな見せ場がないのとで、途中で読むのをやめてしまいました。 僻地医療がテーマの作品名は忘れてしまいましたが、こちらも映画化された、確か、つるべさんと瑛太君が出演された作品の原作はよかったです。 映画は見ておりませんが、インターンの方が年末年始だけ離島の診療所で島の医師と入れ替わり、島のお年寄り達と触れ合う中で医療のあり方や医療現場がかかえる問題を淡々と描いておりました。 短編集でしたが、タイトルが思い出せません。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2012-02-29 13:31:43
書き込み有り難う御座いました。

マヌケ様が書かれている作品は、恐らく「ディア・ドクター」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%89%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC)ですね。自分は原作&映画共に触れていないのですが、広告を目にした記憶が在ります。

昨年辺りから「薄口政治評論家」なる訳の判らない肩書きを引っ提げた、超適当男(元小泉チルドレン)が矢鱈とTV番組に出捲っており、彼が国会議員だった時代から好きじゃない自分は、TV画面に彼の姿が登場すると即座にチャンネルを変えているのですが、最近の小説には「登場人物のキャラクター設定が浅い。」等、「薄口小説」が結構目立っているのが残念。其れでも結構売れてしまうのですから、「日本の小説は大丈夫なのかなあ?」と心配もしてしまう訳ですけれど、此の「神様のカルテ」も一歩間違うと「薄口小説」の仲間入りをしてしまいそうな危うさが。ギリギリの所で、何とか踏み止まっているという感が無きにしも在らずで。
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