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20XX年、「掃除」は日本固有のスポーツとして連綿と続きつつも、何等かの理由により統制下に置かれていた。高校で掃除部に所属する藤代樹は、誰もが認める才能を持ち乍らも、何処か冷めた態度で淡々と掃除を続けている。しかし謎の美少女・高倉偲の登場により、そんな彼に大きな転機が訪れ・・・。
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三崎亜記氏の「コロヨシ!!」は高校生達の日常を描いた、所謂「学園物」の範疇とされる作品。しかし「現実から微妙に乖離した“不思議な世界”を構築しつつ、其処で真摯に生きる人達の姿を記す事で、“何とも言えない現実感”を読み手に与える作風。」の彼だけに、在り来りの学園物で無いけれど。
舞台は“戦後”から40年を経た日本。三崎作品故、この“戦後”が一般的な「第二次世界大戦後」を意味していないのは言う迄も無い。日本を統治する事となった「暫定統治機構」は戦後10年の間、政治・経済・社会体制を抜本的に再構築すべく、様々な統治政策を実施して来たが、スポーツに関しては「『国技』と『掃除』の2つを『活動禁止スポーツ』に指定した。」という設定になっている。スポーツとしての「掃除」に関しては、この本の冒頭で次の様に説明。
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掃除: 古来、賓客を迎えた折に散らかった部屋を、競い合う様に美しい挙措で清めたのが始まりと言われ、「敷舞台」と言われるフィールドの中で、長物を用い、塵芥を回収するのが基本ルールで在る。公式には以下2つの形式が存在する。
「散華の舞」 芸術点、技術点を競うフリー・スタイル競技。個人とペアが在る。
「還立の舞」 乱したフィールドを元の状態に「復元」する速度と美しさを競う団体競技。
この他にエキシビションとしての「花宴」(「遊び舞い」とも言う。)が存在する。一部では奏楽に合わせ、歓楽の場で見せ物として行われる「添え舞い」が行われているが一般的では無い。
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作品のタイトル「コロヨシ!!」は「頃良し」を意味し、競技としての「掃除」を開始する際の発声との事。「掃除」に用いられる道具、「掃除」のルール、「掃除」が行われる「敷舞台」の図示等が詳細に記されている事で、実際に「掃除」という競技が存在しているかの様な感覚に陥る。同時に「良くもまあ、こんな設定を考えたものだ。」と、その下らなさに苦笑いもしてしまうのだが、読み手の心をぐっと掴む“三崎マジック”が健在なのは確かだ。
登場人物達の“正体”が読めてしまったり、樹の友人・大介の存在感が或る時点を境に軽くなってしまったりと、個人的には不満を感じる点が在るけれど、まあまあ合格点を与えられる作品と思う。総合評価は星3つ。
20XX年、「掃除」は日本固有のスポーツとして連綿と続きつつも、何等かの理由により統制下に置かれていた。高校で掃除部に所属する藤代樹は、誰もが認める才能を持ち乍らも、何処か冷めた態度で淡々と掃除を続けている。しかし謎の美少女・高倉偲の登場により、そんな彼に大きな転機が訪れ・・・。
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三崎亜記氏の「コロヨシ!!」は高校生達の日常を描いた、所謂「学園物」の範疇とされる作品。しかし「現実から微妙に乖離した“不思議な世界”を構築しつつ、其処で真摯に生きる人達の姿を記す事で、“何とも言えない現実感”を読み手に与える作風。」の彼だけに、在り来りの学園物で無いけれど。
舞台は“戦後”から40年を経た日本。三崎作品故、この“戦後”が一般的な「第二次世界大戦後」を意味していないのは言う迄も無い。日本を統治する事となった「暫定統治機構」は戦後10年の間、政治・経済・社会体制を抜本的に再構築すべく、様々な統治政策を実施して来たが、スポーツに関しては「『国技』と『掃除』の2つを『活動禁止スポーツ』に指定した。」という設定になっている。スポーツとしての「掃除」に関しては、この本の冒頭で次の様に説明。
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掃除: 古来、賓客を迎えた折に散らかった部屋を、競い合う様に美しい挙措で清めたのが始まりと言われ、「敷舞台」と言われるフィールドの中で、長物を用い、塵芥を回収するのが基本ルールで在る。公式には以下2つの形式が存在する。
「散華の舞」 芸術点、技術点を競うフリー・スタイル競技。個人とペアが在る。
「還立の舞」 乱したフィールドを元の状態に「復元」する速度と美しさを競う団体競技。
この他にエキシビションとしての「花宴」(「遊び舞い」とも言う。)が存在する。一部では奏楽に合わせ、歓楽の場で見せ物として行われる「添え舞い」が行われているが一般的では無い。
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作品のタイトル「コロヨシ!!」は「頃良し」を意味し、競技としての「掃除」を開始する際の発声との事。「掃除」に用いられる道具、「掃除」のルール、「掃除」が行われる「敷舞台」の図示等が詳細に記されている事で、実際に「掃除」という競技が存在しているかの様な感覚に陥る。同時に「良くもまあ、こんな設定を考えたものだ。」と、その下らなさに苦笑いもしてしまうのだが、読み手の心をぐっと掴む“三崎マジック”が健在なのは確かだ。
登場人物達の“正体”が読めてしまったり、樹の友人・大介の存在感が或る時点を境に軽くなってしまったりと、個人的には不満を感じる点が在るけれど、まあまあ合格点を与えられる作品と思う。総合評価は星3つ。