日本の昔話を基にしたミステリー「むかしむかしあるところに、死体がありました。」(著者:青柳碧人氏)を昨年読んだが、一般的には高い評価だったけれど、個人的には“凡庸な印象”しか無かった。ミステリーには重要な“驚き”が、全体的に感じられなかったので。
今回読んだ「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」(著者:青柳碧人氏)は、西洋の童話を基にしたミステリー。クッキーとワインを持って旅に出た赤ずきんが、其の道中で次々と(殺人)事件に遭遇し、彼女が謎を解いて行くというストーリー。「赤ずきん」を始めとして、「シンデレラ」、「ヘンゼルとグレーテル」、「眠れる森の美女」、そして「マッチ売りの少女」と、幼き頃に読んだ童話の設定や(使われていた)フレーズが盛り込まれており、読んでいて思わずニヤッとしてしまう。
4つの短編小説から構成されているが、第3章の「眠れる森の秘密たち」は読み辛かった。「登場人物が多いと、人の名前を覚えるのが大変。」という自分なので、「登場人物が多い上、全員が“向こうの名前”なので、余計に大変だった。」から。
面白かったのは、最終章の「少女よ、野望のマッチを灯せ」。第1章から第3章に掛けて登場して来た赤ずきんだが、「彼女は何故、旅をしているのか?」が最終章で明らかとなる。「そういう事だったのか。」と設定に納得し、又、“綾辻行人氏の館シリーズ”を思い起こさせるトリックも悪く無い。
子供の頃、気にもせずに読んでいた昔話や童話だが、“大人の目”で見ると「意味不明な設定だったり、結構残酷な内容だったりする。」事に気付く。だから、「可哀想に感じていた主人公も、『実は、悪意を持っていた人物なのかも。』と思ったりもする。」ので、「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」みたいな設定も「在り。」だろう。
総合評価は、星3つとする。