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7月1日、杉並区で男子小学生が行方不明となり、翌朝、小学校の校門に、彼の切断された頭部が置かれているのが発見される。同2日、和光市で女子中学生が自宅から姿を消し、翌朝、林の中で刺殺死体となって発見される。同3日、名古屋市のスーパー駐車場に停めていた車の中から1歳の男児が姿を消し、4日後、駅のコインロッカーの中から死体となって発見される。
東京、埼玉、愛知。犯行日時も場所も異なる3つの殺人事件。巧みに姿を隠す犯人に捜査は膠着するが、1人の捜査員は或る人物に疑惑の目を向けた事で、3件は意外な共通点を持つ事が明らかになって行く。
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作家・五十嵐貴久氏の作品、此れ迄に読んだのは「誘拐」だけ。4年前に読んだのだけれど、総合評価は「星3つ」と今一つだった。今回読了した「贖い」、同氏の作品では(自分にとって)2作品目となるが、余り期待感も無く読み始めた。
18年前に発生した「神戸連続児童殺傷事件」を思わせる、実に陰惨たる事件を含め、子供を狙った殺人事件が3件発生する。被害者達には、殺される理由が全く浮かばない。
「全く無関係と思われた複数の殺人事件に、意外な共通点が判明し、1人の人物が容疑者として浮かび上がる。」というのは、ミステリーでは良く在る手法。「贖い」では犯人と思われる人物が比較的早い段階で登場し、“意外な犯人”という面での驚きは無いのだが、3つの殺人事件に関する共通点というのが意外で、「そう来たか!」という驚きが。
何の罪も無い子供達が殺されたという事に関しては、犯人対する怒りを覚えるものの、犯人が犯行に及んだ動機という物に付いては理解出来たりもする。自分が犯人の立場だったら・・・という想定をして、ストーリーを追った人も居られる事だろう。
「加害者は月日の経過と共に“加害”した事を忘れても、被害者は完全に忘れ去る事は出来ない。」、そんな思いを強くした。
総合評価は星4つ。