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14歳で殺人を犯した悪辣弁護士・御子柴礼司(みこしば れいじ)を、妹・梓(あずさ)が30年振りに訪れ、母・郁美(いくみ)の弁護を依頼する。郁美は、再婚した夫・成沢拓馬(なるさわ たくま)を自殺に見せ掛けて殺害した容疑で逮捕されたと言う。接見した御子柴に対し、郁美は容疑を否認。名を変え、過去を捨てた御子柴は、肉親とどう向き合うのか?そして、母も殺人者なのか?
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「さよならドビュッシー」(総合評価:星4つ)、「連続殺人鬼カエル男」(総合評価:星4つ)、そして「魔女は甦る」(数河評価:星3.5個)に続き、今回の「悪徳の輪舞曲」が、自分が読了した4つ目の中山千里氏の作品となる。
「5歳の女児が惨殺され、死体は解体。其の一部位ずつが郵便ポストや賽銭箱の上に放置されるという事件が在った。昭和60年8月、“死体配達人”として世間を騒がせた男が逮捕されるが、彼・園部信一郎(そのべ しんいちろう)が14歳の少年で在る事に、世間は震撼させられる。関東医療少年院送りとなった信一郎。其れから30年経った今、信一郎は名前を御子柴礼司と変え、弁護士として働いている。」というのが、「悪徳の輪舞曲」の設定。信一郎のモデルが、「神戸連続児童殺傷事件」の犯人なのは間違い無いだろう。
「悪徳の輪舞曲」は、所謂「御子柴礼司シリーズ」の第4弾に当たる様だが、自分は前3作を読んでいない。なので、飽く迄も今回の作品で感じる印象を言えば、御子柴は自身が犯した罪を反省している雰囲気は全く無いし、彼が犯した事で世間から叩かれ続けている自身の家族(父親は自殺したとされている。)に対して「申し訳無い。」という思いも全く無い。相手を不快にさせる言動を好んでし、「弁護を引き受けた相手が悪人で在ろうとも、大金さえ貰えれば何でもする。」というスタンス。ハッキリ言って、不快さしか感じられない人物と言って良い。
そんな彼が、殺人容疑で逮捕された実母の弁護を受けたのも、肉親の情とかでは無く、大金を支払って貰えるから。そして、其の実母は「首都圏連続不審死事件」や「京都連続不審死事件」の犯人を思い浮かばせる人物。こういう設定なので、読んでいて不快な思いは募る。
犯人に対する怒りが、犯人の身内へも向かう事が結構在る。其の事で、犯人の身内が死に追い込まれたり、世間から迫害され続けたりするというのを、良く見聞する。彼等の存在が明らかに“犯人を作り上げた要因”として在るならば、身内が責められるのも仕方無い面は在るかもしれないが、そうで無ければ“犯人の身内”というだけで迫害されたりするのは気の毒に思う。そんな思いを、「悪徳の輪舞曲」でより強くした。
「冒頭に記された記述が、読者をミスリードさせる為の物。」という事は、割合早い段階で判った。又、「こんな結末になるのだろうな。」という読みも、略当たっていた。なので、“意外性”という意味ではピンと来る作品では無い。
過去の「御子柴礼司シリーズ」を全く読んでいないので、最後に行き成り登場する或る人物も、「誰?」と頭が混乱。自分の様に“シリーズ物を途中から読む人”も存在するのだから、もう少し配慮が欲しかった。
総合評価は、星3つとする。