ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「猫鳴り」

2012年04月02日 | 書籍関連

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流産した哀しみの中に居る一組の夫婦が、捨て猫を飼い始める。「モン」と名付けられた猫は、夫婦や思春期の闇に足掻く少年の心に、不思議な存在感で寄り添って行く。そして20年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えていた。

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最近、書店で矢鱈其の名前を目にする様になった作家・沼田まほかるさん。以前にも書いたが、「主婦→僧侶→会社経営者→作家」という異色経歴を持った人物でも在る。

 

冒頭に記した梗概は、5年前に刊行された彼女の小説「猫鳴り」。「猫鳴り」なる言葉は全く知らなかったのだが、「猫が身体を摩られた時、気持ち良さから喉をゴロゴロ鳴らす。」事を意味するのだとか。

 

物語は3部構成になっており、第1部は流産した主婦・信枝(のぶえ)、第2部は思春期の闇に足掻く少年・行雄(いくお)、そして第3部は信枝の夫・藤治(とうじ)という3人の視点から、其れ其れ描かれている。第1部には捨て猫を粗雑に扱う描写が、又、第2部には幼児に対する邪悪な描写が在ったりと、読んでいて不快さを感じる展開では在る。(感情を感じさせない少女も、不気味さを増幅させる。)非常に不快では在るのだけれど、現実問題としてはそういう不快な行動を、大なり小なりしている人が存在するのも事実。

 

不快さを募らせる第1部&第2部とは一転し、第3部は胸に迫る内容。同時代を描いていたと思われる第1部&第2部から、20年後以降の時代を描いている。老いた藤治が、矢張り老いた猫のモンを看取るを描いているのだが、延命措置をして生かす事」や「安楽死させる事」、そして「在るがの状態を受け容れ、自然に死を迎えさせる事。」という選択肢の中で揺れ動く藤治の懊悩は、肉親やペットを看取った経験が在る人ならば、凄く理解出来るのではないだろうか。

 

第3部が無かったならば、「不快な作品」としか思わなかったろう。裏読みすれば、第3部を際立たせるに、敢えて作者は前の2部で露悪的な描写を多用したのかもしれない。

 

一般的な評価は高い様だが、全体的には其処迄良い作品とは思えなかった。自分とは肌合いが合わなかっただけなのかもしれないが、総合評価は星3つ


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