ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「法の雨」

2020年10月13日 | 書籍関連

多くの名曲を生み出して来られた作曲家訃報。「7日に誤嚥性肺炎筒美京平氏が、80歳で亡くなられていた。」事が、昨日明らかとなった。今年の5月の記事「筒美京平作品ベスト10」で取り上げた様に、記憶に残る曲は数多い。合掌

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厳格運用に「無罪病判事」と呼ばれた嘉瀬清一(かせ せいいち)は、結審直後に法廷で倒れてしまう。宣告されていたに有効とされた判決は、逆転無罪。無罪判決は死も同然で在る検察界。担当検事の大神護(おおがみ まもる)は打ち拉がれる。有罪率99.7%の日本で、何故今?

其の後、此の事件で無罪放免となった看護師が殺されたと知り、大神は嘉瀬のを訪れるが、嘉瀬は老人ホーム居り、会話も儘ならない状態となっていて・・・。

彼の判決に、何が在ったのか?“法”は、救いか縛りか?
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下村敦史氏の小説法の雨」を読了。彼の作品を読むのは、「第60回(2014年)江戸川乱歩賞を受賞し、彼のデビュー作となった『闇に香る嘘』。」以来2作品目。

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成年後見制度:人(自然人)の意思能力が低い状態が或る程度の期間続いている場合に、本人の判断を他の者が補う事によって、本人を法律的に支援する為の制度。
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此の作品は「無実と無罪に付いて」や「裁判官の独立人民裁判にならない為の大原則)」等、法律に関する幾つかのテーマを盛り込んでいるが、「成年後見制度」も其の1つ。法律を専攻していた人間なので、成年後見制度に付いては学んだし、其の問題点も知らなかった訳では無い。そんな自分だが、「法の雨」で初めて知る“成年後見制度の問題点”も在り、非常に興味深く読んだ。

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日本は昔から家族中心主義ですから、制度がはじまったころは家庭裁判所も家族を後見人にしていました。九割が身内です。しかし、口座から自由にお金が引き出せる魔力に負けたのか、私利私欲のために当事者のお金を使う後見人が相次ぎました。横領です。そのため、家庭裁判所は専門家を選任するようになりました。今では親族後見人は二割ほどです。

・「・・・決して珍しくありません。弁護士司法書士の後見人を職業後見人というのですが、職業後見人がすることといったら、通帳を預かって、一回か二回、本人に面会して、年に一回、後見事務の報告書を家裁に提出するだけです。」。「本当にたったそれだけなんですか?」。そうです。そもそも、後見人の活動内容には法律などによる細かい規定がありません。

後見人の報酬後見人の預貯金の金額に左右されるからです。。幸彦(ゆきひこ)ははっと目を瞠った。‐預貯金が1千万以下だと月額二万、1千万以上五千万以下だと月額三、四万です。
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「親族後見人が被後見人の金を勝手に引き出し、私的に使ってしまう。」という話は良く聞くので、家庭裁判所が職業後見人を選任する事が増えたというのは知っていたけれど、親族後見人の割合が2割程減っていたとは・・・。

「職業後見人がきちんとした人間ならば良いのだけれど、悪質な人間だったら、悪い事がし放題だな。」という思いが。職業後見人の同意が無ければ、被後見人の身内にとって“支出されて当然の金”で在っても自由に使えないし、大した事をしなくても年間で24万円以上の報酬を支払い続けなければならない。一度選任された職業後見人は、余程の事が無い限り、被後見人が亡くなる迄解任される事は無い。と言う。此方に"7つの問題点”が詳しく記されている様に、成年後見制度には改善されるべき点は少なく無い。

勉強になる事が少なく無かったし、ストーリーとしても面白い。残念だったのは、明らかな誤記が在った事。嘉瀬の孫は両親を亡くしている設定なのに、最後の方で「母」が生きているかの様な記され方をしていた。本来「祖母」と記されるべき所を、「母」と誤記してしまったのだろう。自分が読んだのは初版なので、増刷の際に訂正される(ている)かも知れないが。

総合評価は、星4つとする。


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2 コメント

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Unknown (悠々遊)
2020-10-15 14:07:50
こんにちは。
成年後見人制度で親族による横領は時たまニュースになるので知っていましたが、職業後見人の仕事の内容と報酬額は初めて知りました。
成年後見人制度が「本人の判断を他の者が補う事によって、本人を法律的に支援する為の制度」という割には、実際していることは単純な財産管理で、しかもその報酬が庶民感覚では高額、というのは釈然としません。
被後見人が亡くなる前に職業後見人に支払われる預貯金が尽きた場合にはどうなるのでしょう。
その時点で後見人が解除される、若しくは身内が支払い続けるのでしょうか。
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>悠々遊様 (giants-55)
2020-10-15 20:19:02
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

職業後見人の業務内容及び報酬に付いては、自分も此の本で初めて知りました。徳川家康が「百姓は生かさぬ様、殺さぬ様。」と言ったそうですが、職業後見人からすると「被後見人の預貯金額が減ってしまうと、自身の報酬額も減ってしまう可能性が在る。」訳ですから、「被後見人は殺さぬ様、其の預貯金額は減らさぬ様。」という事なのかも。

「被後見人が亡くなる前に、職業後見人に支払われる預貯金が尽きた場合はどうなるのか?」、確かに気になりますね。調べてみた所、次のサイトにQ&Aが載っていました(Q21)。
http://ls-kanagawa.jp/inquery.html

「法定後見では様々な扶助の制度や、支援事業で支払われる場合が在ります。内容は各地域によって異なりますので、詳しくは御住まいの市町村の障害・高齢者担当等に御問い合わせ下さい。」との事ですので、結論から言えば、「状況に応じて異なる。」という事なのでしょうね。
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