ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII」

2017年11月13日 | 書籍関連

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池袋トラブルシューター真島誠(まじま まこと)には、あらゆる難題が持ち込まれる。出鱈目虐待疑惑をネットに書き込まれて炎上した宅配ドライヴァー。母親が悪い男とドラッグ嵌まった女子中学生。根拠の無い情報が溢れるオカルトサイトATMの不正操作による大規模詐欺

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東京池袋西口公園近くの果物屋の息子・真島誠が、“池袋のトラブルシューター”として、依頼された難事件を次々と解決して行く。」という「池袋ウエストゲートパーク・シリーズ」。第1弾が上梓されたのは1998年。当時、著者石田衣良氏は38歳で、主人公の“マコト”の年齢設定よりも恐らく10歳以上年上と思われるが、年齢差を感じさせないエッジの効いた、瑞々しい文章が溢れていた。

 

其れから19年。57歳となった石田氏が上梓したのは、「池袋ウエストゲートパーク・シリーズ」の第13弾「裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII」だ。

 

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おれたちが生きているのは、即決裁判が許された情状酌量のない時代だ。みんな考えるのが面倒で、善悪をさっさと悩まずに決めてしまいたいのである。とくにネットで見かけた他人のトラブルについてはね。不倫は悪、経歴詐称は悪、ギャンブルは悪(国家公認のやつ以外)。最近の炎上パターンはお決まりの形ばかり。集団で寄ってたかって袋叩きにし、社会的に葬り去る。ご清潔な人の道から、わずかでもはずれてしまえば、数の力を頼りにした恐怖のバッシングが待っている。キュウクツで息苦しい時代だよな。 「滝野川炎上ドライバー」より

 

嘘とでたらめの世界に、おれたちは生きている。ある海外の辞典出版社が2016年を代表する言葉に「ポスト-トゥルース」という単語を選んだそうだ。嘘でもでたらめでも、話題を呼んで数を集めれば勝ち。国境に壁をつくるとか、異教徒は国から放り出すとか、外国製品にとんでもなく高い関税をかけるとか。大衆に受けるのなら、できようができまいがなにをいってもかまわないのだ。

おれたちが口にすることはもう「真実」である必要はないし、別に正直でも誠実でもある必要はない。数を集めれば、それでいいのだから。大統領選挙も「PPAP」もまったく同じだよな。ネットでは数の多いところを狙わなきゃ意味なんてないのだ。数がただひとつの正義で、富と権力源泉だ。 「裏切りのホワイトカード」より

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執拗な性的描写に、辟易とさせられる事が多い。」というのが近年の石田作品だが、「池袋ウエストゲートパーク・シリーズ」はそういう作風からは乖離している。

 

「石田氏も“アラ還”となり、『池袋ウエストゲートパーク・シリーズ』で描かれる若者像も、何か時代遅れな感じがする。」といった批判も在る様だが、個人的にはそういう感じはしない。シリーズを始めて読んだ時に魅了された“エッジの効いた瑞々しい文章”は健在

 

児童虐待格差社会、ドラッグ、ネット上等での常軌を逸したバッシング等、現代社会が抱える“闇”を題材にした4つの短編小説で構成されている。個人的に一番好きなのは「滝野川炎上ドライバー」。此の作品もそうだが、「池袋ウエストゲートパーク」には“社会的弱者への温かい視線”というのが感じられ、そういう所に自分は魅了されるのだと思う。

 

長期シリーズになると、好き嫌いがはっきり分かれて来るもの。今回の作品に付いてネット上では低い評価も在る様だが、自分は好きなテーストだ。総合評価は、星4つとする。


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