ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「任侠シネマ」

2020年09月03日 | 書籍関連

内海哲也投手、743日振りの勝利、本当におめでとう!!!

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「永神(ながかみ))の叔父貴は、映画館の話でいらしたんですか?」。興味津々の若いに、阿岐本(あきもと)組代貸の日村誠司(ひむら せいじ)は、心の中で溜め息を吐く。困った人をほっとけず、更には文化事業が大好きなやくざの親分・阿岐本雄蔵(あきもと ゆうぞう)のには、一風変わった経営再建の話が次々と舞い込んで来る。

今度の舞台、潰れ掛けの映画館「千住シネマ」にも、勿論、山積みの問題が。TVインターネットに押されて、客足遠退く厳しい業界事情も然る事乍ら存続を願う「ファンの会」へ嫌がらせをしているの存在が浮上。

やくざも生き難い世の中で、街の小さな映画館をどう守る!?
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警察小説名手として知られる今野敏氏だが、他の分野の小説手掛けている。「昔気質のやくざの組長・阿岐本雄蔵率いる阿岐本組の面々が、“すっかり傾いて廃業寸前の組織”を立て直す。」という「任侠シリーズ」もそんな1つで、彼等は此れに出版社、私立高校、病院、そ
して銭湯を再建して来て、第5弾の「任侠シネマ」では潰れそうな映画館を再建する事に。(任侠シリーズに関して言えば、自分が読んだのは「任侠病院」、「任侠浴場」に続き、今回の「任侠シネマ」で3作品目。)

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「昔、映写技師はフィルムの手入れもしたのです。切れたフィルムや切れかかったフィルムは切り取ってつめるのです。何コマか切り取っても映写にはほとんど影響がないんです。好きな女優俳優のアップのコマを切り取ったりするのは、映写技師の特権だと言われていました。」。「そんなことしていいんですか?フィルムってのは配給会社からの借り物でしょう。」。本来は切り取った部分を元どおりに貼り戻してフィルムを返却するものなのですが、たいていは大目に見られていましたね。祖父はそういうフィルムの切れ端を大事に取っておいたわけです。
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フィルムを使わないDLP方式が一般化した今では、「映写技師が、借りたフィルムの切り貼りを行う。」なんていうのは考えられない事だろう。「大昔、手塚プロダクションでは、手塚治虫氏の書き損じた漫画の原稿や使い終えたアニメセル画等が無造作塵箱に捨てられていて、スタッフや遊びに来たファンが持って帰ったりしていた。」という話を聞いた事が在る。そういった物が高額で売買されている今では、考えられない事だ。「切り取ったフィルムのを返却せず、自分の宝物として保管。」なんていうのも、そんな“良き時代”の話だ。

映画を見るなら、映画館に足を運ばなくても、TVやインターネット等で見れる時代。でも、「任侠シネマ」内で書かれている様に、映画館で見るからこそ味わえる特別感(=非日常性)というのは、確かに在ると思う。個人で見るならば、音を立てて物を食ったり飲んだり、途中で映像を止めたりしても、全く自由。でも、映画館では、そういう訳にはいかない。色々制約が在って面倒とは言えるが、逆にそういう制約が在るからこそ、“社会のルール”を自然に覚えられるという面も在るだろう。映画館の減少は、“社会のルールを覚える場”の減少も意味している。というのは、全く的外れでは無い気がした。

「もう一波瀾も二波瀾も在るのかも思いきや、意外とあっさり終わった。」という物足り無さは在るけれど、登場人物達がキャラ立ちしていて面白い。未読の2作品、時間を見付けて読んでみたいと思う。

総合評価は、星3つとする。


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