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アメリカのモハーヴェ砂漠に聳え立つホテル・カリフォルニア。外界から閉ざされた其の空間に迷い込んだトミー事富井仁(とみい じん)は、奇妙な殺人事件に巻き込まれる。連夜のパーティで歌を披露する歌姫の1人が、密室で死体となって発見されたのだ。音楽に関する知識で事件解決に乗り出すトミーだったが、軈て不可思議な状況下で新たな惨劇が・・・。果たして、繰り返される殺人事件の真相とは?
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数多存在する文学賞の中で、「『このミステリーがすごい!』大賞」は多くの人が注目する物の1つ。創設されたのは2002年の事で、其れから15年経った昨年、過去の投稿作(4,800篇以上)の中から、「受賞には到らなかったものの、才能を感じ得た3つの作品が選び出され、“超隠し玉”として上梓する事となった。其の内の1つが、今回読了した「ホテル・カリフォルニアの殺人」(著者:村上暢氏)だ。
売れないミュージシャンの“トミー”が、「ホテル・カリフォルニア」という外界から隔絶された空間で発生した“密室殺人”の謎を解くという此の作品、タイトルや各章の章題は、アメリカのロック・バンド「イーグルス」のヒット曲のタイトルが用いられている。
密室殺人を始めとして、内容的には本格ミステリーの範疇に入る「ホテル・カリフォルニアの殺人」。ミュージシャンという職業柄、“音”には煩いトミーが、其の音によってヒントを得、謎を解く。音楽好き、特にイーグルスのファンには堪らない作品だろう。
トリック的には面白いと思う。でも、現実性という意味では「どうかなあ。」と思う所も在るし、“ドップラー効果を発生させる事となった行為”の必要性が理解出来なかった。
総合評価は、星3つとする。
きっと、これを読めば、イーグルスの楽曲が流れて来るのでしょうね。ある程度、力がないと、オマージュは作れないわけですが、音楽という虚構に、物語の虚構を重ね合わせると、感動的なものとなり、それは、事実を凌駕する事さえあるのでしょうね。
イーグルスに対するオマージュの念は、ファンで無い自分でも強く感じる作品でした。探偵役がミュージシャンという事で、“音に関するトリック”には感じ入る物が在ったけれど、読む前の期待度が高かった分、今一感を覚えたのも事実です。