*********************************
或る日突然、銃を所持した超能力者(らしい)2人組に拉致された町田瞬(まちだ しゅん)。彼等は組織の命令で、危険な能力を持つ(らしい)瞬を殺しに来たのだと言う。其の能力とは、超能力の「無効化」。詰まり、瞬の前では超能力者による超常現象は発生しない(らしい)。
何とか命拾いした瞬は、代わりに超能力者による組織「超現象調査機構」で働く事になり、軈て奇怪な事件に巻き込まれて行く・・・。
*********************************
第15回(2016年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で隠し玉に選ばれた小説「愚者のスプーンは曲がる」(著者:桐山徹也氏)。此の作品には数多くの超能力者が登場するが、超能力を持つ一方で、必ず“代償”も抱えている。主人公・町田瞬も超能力者の1人だが、彼自身は全く其れを自覚していなかった。と言うのも、彼が持つ超能力とは“他人の持つ超能力の無効化”という自覚し辛い物だったからだ。物心が付いた頃より、不運に見舞われる事が多かった瞬だが、彼が超能力を持つ事での代償が“不運”だった。
超能力者達を描いた作品なのに、具体的に超能力が発揮されるシーンは無い。と言うのも、ストーリーは瞬の視点で書かれているからだ。瞬の視点で書かれているという事は、常に瞬が登場しているという事で在り、其れは一緒に登場している超能力者の超能力が無効化されているという事になるからだ。
又、登場する超能力者達の持つ超能力、そして其の代償には“間抜け”に感じる物が在ったりする。或る人物が持つ超能力は“物に残った記憶を読み取る能力”という“使える能力”で在るのだけれど、読み取る為には「当該する物を、自身の肛門の中に入れなければならない。」し、其の代償は「食欲が止まらない。」といった具合にだ。
「超能力者を描いているのに、具体的に超能力が発揮されるシーンが無い。」事に加え、「超能力者達の持つ超能力や代償の内容。」等、全体的に漂う間抜けさが悪く無い。
唯、マイナス点も多い。登場する超能力者の人数が多く、「此の人、誰だっけ?」と頁を遡り、確認しなければならない事が何度か在った事もそう。もう少し人数を絞った方が、スッキリしたと思う。
又、結末が良く判らなかったのも難。「どういう結末になるんだろう?」と散々期待させておいて、良く判らない結末というのは、肩透かしも良い所。最後の最後に登場した“謎の老人”なんぞは、「“言っている事”が、以降にどう繋がって行くのか?」が全く理解出来なかったし。
総合評価は、星3つとする。