ミステリー関連の年間ブック・ランキングで、自分が注目しているのは3つ。「2014週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」(発行元:文藝春秋)と「2015本格ミステリ・ベスト10【国内編】」(発行元:原書房)は既に発表されていたが、残る1つの「このミステリーがすごい!2015年版【国内編】」(発行元:宝島社)が発表となった。
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「このミステリーがすごい!2015年版【国内編】」
6位: 「土漠の花」(著者:月村了衛氏)
9位: 「女王」(著者:連城三紀彦氏)
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「2014週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」では1位、「2015本格ミステリ・ベスト10【国内編】」では2位の「満願」が、「このミステリーがすごい!2015年版【国内編】」では1位。又、「さよなら神様」及び「小さな異邦人」も高評価を得ているので、此れ等の作品を近い内に読んでみようと思っている。
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殺人事件の容疑者として逮捕された少年には、戸籍が無かった。18歳位だと推定され、「町田博史(まちだ ひろし)」と名付けられた少年は、少年院入所時の知能検査でIQ161以上を記録する。
法務教官の内藤(ないとう)は、町田が何を考えているか読めず、彼が入所した事によって院内に起こった不協和音に頭を悩ませていた。
軈て、何人かの少年を巻き込んだ脱走事件の発生によって、事態は意外な展開を見せる。
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我が国では毎年、親のネグレクトやDVが原因で無戸籍となる人が、少なくとも500人程度確認されているそうだ。学校に1度も通った経験が無かったり、無戸籍の儘30年以上生きて来た人も居るとか。記録上は存在していない事になっている無戸籍者は、運転免許証や健康保険証も得られず、不安な日々を送っている。
そんな無戸籍の少年・町田博史を主人公にした小説「神の子」(著者:薬丸岳氏)を読了。或る人間が或る基準を満たす子供達を集め、彼等を“神の子”と呼ぶ。“神の子”とは“神から選ばれた子”という意味で、「平等な社会」を作るという目標の下、彼等は或る事に従事させられる。其の或る事とは“犯罪行為”。「犯罪によって幸福な人間を不幸に陥れ、其の代わりに不幸な人間を幸福にさせる。」という、実に身勝手なロジック。
ハッキリ言って、非常に荒唐無稽な内容では在る。でも、キャラクター設定やストーリー展開が絶妙で、900頁を超える長編乍ら、一気に読み終えてしまった。特に、登場人物達の正体が明らかになって行く度の衝撃度は、可成りの物だった。
ミステリー関連の今年のブック・ランキングに、此の作品が入っていないのは、刊行された時期(2104年8月)が遅かったからだろうか?そうとでも思わない限り、ベスト10に此の作品が入っていない理由が判らない。其れ程、読み応えの在る内容だった。