昨日、自民党の岸田文雄政調会長が記者会見を行い、9月の自民党総裁選への不出馬、そして安倍晋三首相の総裁3選支持を表明した。先月の大豪雨の際にも、総裁選への支持を必死に訴えていたと報じられた安倍首相だけに、今回の岸田政調会長の決断でに呵々大笑している事だろう。
石破茂元幹事長程では無いにせよ、安倍首相の政治姿勢に何度か疑問を呈して来た岸田政調会長。明らかに安倍首相とは相容れない政策を幾つか打ち出していたし、自民党内では石破元幹事長と並んで評価出来る数少ない政治家だった(石破元幹事長もそうだが、全てを評価している訳では無いけれど。)。日本の政治に危うさを指摘もしていた彼だけに、今回の“敵前逃亡”には大幻滅しか無い。
不出馬の理由を幾つか述べていたが、御為ごかしにしか聞こえなかった。「出馬しない事で安倍首相に恩を売り、次の首相の座を禅譲して貰う。」という本音が透けて見えたからだ。「次の首相は君だよ。」と安倍首相から“約束手形”を貰っているのだろうが、「『竹下登氏に首相の座を譲る事で、其の次の首相の座を自分に禅譲して貰う。』という所謂『中曽根裁定』に従うも、結局首相になれずに病死した安倍晋太郎元幹事長(安倍首相の父)。」の例からも、約束手形が如何に当てにならないかを、岸田政調会長は理解するべきだった。
「所謂『加藤の乱』にて『決断し切れなかった。』事で、其の後の政治生命が実質的に終わってしまった加藤紘一元官房長官。」の姿と、岸田政調会長の姿が重なってしまう。狡猾な安倍首相が首相の座を禅譲するかどうかは判らないし、何よりも「国や国民を思う様な事を言っていたけれど、結局は自分の事しか考えていないんだな。」と国民にばれてしまった事が、仮に首相になったとしても悪影響を及ぼすだろう。
以前、内閣支持率がガクンと下がると、「安倍首相の母が『息子の体調が心配。もう首相を続けて欲しく無い。』と、安倍首相の妻は『主人は、長く首相を続ける気が全く無い。』と言っている。」という報道が在った。安倍首相に近いメディアによる報道だったので、「こういう報道を流す事で同情を買い、支持率回復に結び付けたいのだろう。」と思ったもの。
過去に何度か書いているけれど、「安倍晋三という人物を衝き動かしている源は、『自分を重要視しなかった連中は許せない!』という『怨』の感情で在り、『1日でも長く首相の座に留まる事で歴史に名を刻み、重要視しなかった連中を見返してやるんだ!』と安倍首相は考えている。」というのが、彼をずっと見て来た自分の考え。
だから、彼は自分から首相の座を降りるなんて思ってもいないし(以前、首相の座を降りたのは、其の直前に報じられた『相続税3億円脱税疑惑』で言い逃れが出来ず、降りざるを得なかっただけの事。)、今、彼の頭の中に在るのは「『2020年東京オリンピック』を首相として迎える事。」、「首相在任通算記録No.1を達成する事。」、そして「改憲を成し遂げた首相となる事。」等、自分の名を歴史に刻む事だけ。「国民を守る!」と声高に叫び乍ら、実際には自分や自分の御友達だけを守っている様な人物。
安倍首相や岸田政調会長、小泉進次郎筆頭副幹事長等々、(与野党を問わず)「国民を一顧だにせず、“自分ファースト”なだけの“政治屋”が跋扈する日本。」は、本当に大丈夫なのだろうか?
「単に3選を決める。」というのでは無く、「獅子身中の虫たる石破茂元幹事長を、何れだけ引き離して3選を決める。」という事が、安倍首相の頭の中では最優先されている様ですね。前回の総裁選では、国会議員票で圧勝したものの、党員投票では倍近い差を付けられて負けた安倍首相。「僕ちゃんに歯向かう奴は、徹底的に叩き潰してやる!」というのは、彼の尋常では無いプライドの高さ&粘着質さを表しており、一国のトップとしての危うさをどうしても感じてしまう。
安倍支持が揺るがない自民党議員というのは、結局、我が身安泰だけが大事で、国民や国を一顧だにしていない。嘗ての自民党は「右から左迄揃っていた。(今の自民党は「右から極右迄揃っている。」という感じ)」ので、少しでも首相がおかしな言動をすると、引き摺り下ろすという“健全さ”が在ったけれど、今は“安倍党”の様相を呈しており、異論反論を許さない異常さが満ちている。
国民も“確固たる理由”で安倍首相を支持しているのなら未だしも、「自身と少しでも相容れない存在は排除して構わない!」といった風潮に押され、「自分だけは、そういう排除される対象にはならない。」という無根拠な理由を持った上で、マイノリティー叩きに嬉々として加わり、安倍首相を支持している様な人が目立つ。此れはアメリカやロシア等、他国でも見られる風潮では在りますが。
勝負の先が見えた総裁選では、何が面白いのか、全く分かりませんが、今のメディア報道で良い処は、日本会議といった安倍首相の右寄りのロビーがトップに出て来ない、という事ぐらいで、安倍首相自身も、政治ロビーを統制する事によって、マフィアのように閣僚・政治家と兄弟分となり社会に暗躍する事を嫌っているように思います。だからこそ、自民党の中でしか生きられない、という失点も見えて来るのですが、小泉然り、政治家は社会に第二の基盤を持つ方が、危険だと思うのです。