昔から「此の漫画(又はアニメ)が流行っている。」という話を見聞すると、取り敢えずは読む(又は見る)事にしている。実際に読んで(又は見て)みて思いっ切り嵌まる場合も在れば、「面白さが全く理解出来ない。」と読む(又は見る)のを止めてしまう場合も。前者で言えば「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」や「DEATH NOTE」等、そして後者は「Dr.スランプ アラレちゃん」や「進撃の巨人」等がそうだ。
「『鬼滅の刃』という漫画が面白い。」という記事を読んだのは、半年位前だったか。「大正時代を舞台に、主人公の少年・竈門炭治郎(かまど たんじろう)が、鬼と化した妹・禰󠄀豆子(ねずこ)を人間に戻す方法を捜す為、鬼殺隊の剣士となって戦う姿を描く和風剣戟奇譚。」で、「家族の情愛が描かれている。」という事だった。「面白そうだな。」とは思ったものの、実際に漫画を読む機会が無い儘、先にアニメを見たのは3ヶ月程前。見て、すっかり嵌まってしまった。嵌まった理由は後述する。
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蝶屋敷での修業を終えた炭治郎達は、次なる任務の地「無限列車」に到着する。其処では、短期間の内に40人以上もの人が行方不明になっていると言う。禰豆子を連れた炭治郎と我妻善逸(あがつま ぜんいつ)、嘴平伊之助(はしびら いのすけ)の一行は、鬼殺隊最強の剣士で在る“柱”の1人、炎柱の煉獄杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)と合流し、闇を往く無限列車の中で、鬼と立ち向かうのだった。
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現在公開中の映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、アニメ「鬼滅の刃」(全26話)の其の後を描いている。先月16日に公開開始となってから1ヶ月も経たないのに、「興行収入は約157億円、観客動員数は約1、100万人に達した。」というのだから、「もう社会現象になった。」と言って良いだろう。
「鬼滅の刃」にすっかり嵌まってしまった理由は幾つか在るけれど、大きいのは「テーマが良い。」と「減り張りが利いている。」、そして何よりも「登場人物達が皆キャラ立ちしており、非常に魅力的。」という事だ。
「鬼滅の刃」のテーマが“家族の情愛”と上記したけれど、“正義と悪”というのも付け加えたい。「正義の存在が、悪の存在を倒す。」という単純な構図では無く、初期の「ウルトラ・シリーズ」で良く描かれていた「悪とされる側にも“存在理由”が在り、『100%悪い!』と取り除かれてしまうのはどうなのか?」と同じ匂いが「鬼滅の刃」には在る。鬼となってしまった者にも家族は在り、其処には情愛が存在する場合も。
鬼が人を食らったり、鬼を倒す場面等は、描かれ方が残酷。でも、そういうシリアスな場面が在る一方で、腰砕けしてしまう程にギャグ調の場面が結構登場。此の減り張りの利いた演出は、見ている者をストーリーの中にどんどん引き込んで行く。
そして、一番の魅力は、登場人物達が皆、実に魅力的な事。「普段は非常にクールな人物が、一転して間抜けな部分を見せたり、逆に普段は実に情け無い人物が、一転して無双の姿を見せる。」といったギャップが実に良い。愛らしいキャラクターが多いけれど、個人的には我妻善逸が一番好き。
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」も、3つの魅力が最大限に引き出されている。独特な背景の描かれ方も美しく、強く印象に残る。結末はとても悲しい物だけれど、「強い者は、弱い者を守るのが責務。」という亡き母親の教えを守る事が出来た“彼”の姿は、多くの観客の胸を打つ事だろう。
総合評価は星4つ。