「アメリカは、先進国中の先進国。」というのは、多くが認める事だろう。でも、そんな国なのに、保守派と呼ばれる人達、特に“極右的な思考”の人達の中には、「進化論なんて出鱈目だ。人間は、アダムとイヴの子孫で間違い無いのだから。」と主張する者が少なく無い。だからこそ、「進化論を、学校教育の場で教える事を制限する法律。」、所謂「反進化論法」という物が制定されており、過去に何度か「進化論裁判」というのが起こされている。何を信じ様が個人の自由だけれど、「科学的な思考を蔑ろにし、宗教的な思考を最優先させる。」というのは、個人的に全く理解出来ない。
アメリカでは近年、「『Qアノン』という物が、大きな影響力を及ぼしている。」と言われている。「陰謀論を唱える一部の保守派で在り、『ドナルド・トランプ政権及びアメリカに敵対する者の機密情報にアクセス出来る。』と主張するアメリカの個人、又は複数の人物を指す概念。」を意味する。「無根拠な陰謀論を持ち出す事で、トランプ大統領を徹底的に擁護し、逆にトランプ大統領と敵対する存在を徹底的に叩く。」というのが、Qアノンを妄信する人達が好む手法。
「民主党及びトランプ大統領を批判する著名人は、悪魔崇拝と児童虐待に関与している。」というのが、Qアノンを妄信する人達の主張。中世ならいざ知らず、21世紀の先進国で「反トランプの者達は皆、悪魔が取り憑いているのだ!」と真剣に訴える人間が少なからず存在するというのは、もう驚きしか無い。(今回の大統領選挙でもトランプ大統領の支持者が、「マス・メディアのトップは毎日朝6時に集まり、『今日は、どういう反トランプのフェイク・ニュース(虚偽報道)を報道するか。』を話し合っている。」と真顔で訴えていた。)“不思議な国・アメリカ”というのを、強く感じてしまう。
今回の大統領選挙、アメリカ人では無い自分だが、結果をずっと注視していた。「自分にとって少しでも不都合な事柄は全て『フェイク・ニュースだ!』と言い張り、そして反トランプの立場の人や組織に対しては、次から次へとデマを飛ばす。何方の場合も、全く証拠を示さずに。多様性を認めず、国民間に差別意識や憎悪を煽り立てる事で自身への支持を高め、国民の分断を推し進めた。」(残念な事に日本も、似た様な雰囲気が強まっているけれど。)という彼の手法が心底嫌いだったので、「トランプ大統領が再選されません様に。」と願っていたので。
4年前の大統領選挙、事前の世論調査結果から、「トランプ候補が勝利する事は、100%無い。」という雰囲気が一般的だった。でも、実際には「トランプ候補が圧勝し、大統領に就任。」という現実が待っていた、以降、トランプ大統領や彼の支持者達は「ほら見た事か。マスメディアが報じるのは、全てフェイク・ニュースだ!!」と言い続ける事に。
世論調査の結果が見事に外れてしまった事から、「今回の大統領選挙では事前の世論調査が、非常に慎重に行われた。」と言う。其の結果、「民主党のジョー・バイデン候補の支持が、トランプ大統領を上回っている。」という報道が相次いだ。ほっとする思いと共に、「でも、4年前の事が在るからなあ・・・。」という不安も。
投開票の初日、トランプ大統領の得票がドンと伸びた。「4年前の再現か・・・。」と頭が痛くなり、報道番組を見るのを止めた。「トランプ大統領の勢いが凄い。再選は堅そう。」という雰囲気が何の報道番組からも伝わって来たし、自分も同じ思いだったのだが・・・。
翌朝、起きてTVを点けたら、状況が一変していた。前日の“当日投票分”に加え、“郵便投票分”の開票が始まったからだ。「新型コロナウイルス感染症の流行を恐れ、バイデン候補の支持者は、郵便投票を多く行う傾向が在る。」という予想はされていたが、言われていた以上に其の割合が高かった様だ。バイデン候補の激しい追い上げが続き、得票数でトランプ大統領を逆転する州が続出。激戦州の決着が中々付かなかった事で、“当選確実”の速報が出される迄時間を要したけれど、投開票日から4日後に「バイデン候補、当選確実。」の速報が出た。「獲得した選挙人の数ではバイデン候補がトランプ大統領を大きく突き放したが、獲得した票数ではそんなに大きくは上回らなかった。」という結果になりそうだ。
投票結果を認め様としないトランプ大統領は、子供の様に抵抗している。無教養で恥知らずの彼らしい往生際の悪さだが、獲得した選挙人の数では大きく引き離されているだけに、再選という事にはならないだろう。
誠実さと真面目さが、画面からひしひしと伝わって来るバイデン候補。人として親しみ易さを感じるし、(トランプ大統領とは全く逆に)友達になりたいタイプでは在る。でも、大統領としてとなると「高齢(来年1月20日に予定されている大統領就任式時、彼は78歳。アメリカ大統領史上、最高齢での就任となる。)」及び「決断力」という面で不安を感じる。「絶対にバイデン候補が良い!」というのでは無く、「トランプ大統領の再選だけは何としても防がなければいけないので、“消去法”でバイデン候補に投票する。」という有権者が、実際には少なからず存在したのではないだろうか。
何はともあれ、余りに身勝手過ぎたトランプ大統領が“退場”する事は、本当に良かった。万が一、彼の再選が決まったら、自分は「アメリカという国が、心底嫌いになっていた。」事だろう。「アメリカ国民の分断が少しでも解消され、アメリカが真面な国に戻ってくれる。」事を、バイデン氏に期待したい。