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九州でトマトが枯死する病気が流行し、帝都大学の植物病理学者・安藤仁(あんどう じん)は農林水産省に請われ現地調査を開始した。安藤は、発見した謎のウイルスの分析を天才バイオハッカー「モモちゃん」の協力で進めるが、そんな折、トマト製品の製造販売会社の研究所に勤める旧友・倉内(くらうち)が変死。彼は熟さず、腐りもしない新種のトマト“kagla(カグラ)”を研究していたが・・・。
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第16回(2017年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で優秀賞を受賞した小説「感染領域」。著者・くろきすがや氏は菅谷淳夫氏と那藤功一氏の2人による作家ユニット。東大卒という経歴を持つ2人だが、興味深いのは共に文科系の学部に在籍していたという事。“興味深い”と書いたのは、此の作品が生物学や植物学に付いて詳細に記されており、「そういう分野を勉強して来た人達が書いた作品。」という印象が在ったから。
「マイクロRNA」、「ポリアクリルアミド」、「ポリメラーゼ」等々、典型的な文系人間の自分には珍紛漢紛な専門用語が、此れでもかという位に多用されている。逐一意味合いが説明されてはいるけれど、余りに多用されているので、さくさく読めるという感じでは無い。ストーリーにリアリティーを出す為の多用だろうが、“流し読み出来無い人”にとっては苦痛だろう。
筆力は在る。でも、ストーリー自体は凡庸。「生物学や植物学の知識が増えたから、まあ良しとするか。」という感じ。
総合評価は星3つ。