30年近く前、当時勤めていた会社の(直属では無い)上司・A氏から聞いた話だ。A氏は当時“課長職”だったが、昼飯を一緒に食べている際、「なあ〇〇(giants-55)、俺は男許りの3人兄弟の長男、次男は病院勤めの医者、そして三男はフランチャイズのクリーニング店を2つ運営してるんだけど、一番稼ぎが良いのは誰だと思う?」と聞いて来た。「次男、Aさん、そして三男って感じですか?」と答えた所、「全然違うよ。」と大笑いしたA氏。「正解は、断トツで三男。次に次男。そして、大きく離れて俺。医者は開業医だと儲かるみたいだけど、次男は病院勤務だから、其れ程でも無い。で、三男だけど、フランチャイズのクリーニング店って開業資金がそんなに要らないし、機械設備もレンタルしてくれるから、凄く儲かるみたいだよ。」と。
そう言われてみれば、当時、周りでは矢鱈とクリーニング店がオープンしていたし、潰れたのを見掛けた事も無く、「そういう事だったんだ。」と思った次第。実際に詳細を調べてもおらず、A氏の話が本当なのかどうかも判らない。又、当時はそうだったとしても、以降の状況は変わった可能性も在る。だから、A氏の話が事実なのかも含め、話半分に思って欲しいが、少なくとも当時は「クリーニング店経営=安定した運営」という状況だったのは確かだろう。
6月30日付け東京新聞(朝刊)の「こちら特報部」に、「クリーニング店 苦境 ~25年で7万6,000店に半減~」という記事が載っていた。厚生労働省によると、「2022年度のクリーニング店数は約7万6,000店で、1997年度の約16万4,000店と比べると、四半世紀で半数以下(約53.7%減)になっている。」と言う。近年では、年間約3,500~4,500店舗廃業しているというのだから、相当な数だ。近所では其処迄顕著では無いものの、古くからのクリーニング店が1店舗、10年位前にれている。「店主が高齢となり、跡継ぎが居ないって事で廃業したのかなあ。」と想像していたのだが・・・。
「長引く不景気により、節約志向が強まった。」、「形状記憶タイプのワイシャツの普及やクール・ビズ等、服装のカジュアル化、低価格で大量生産&販売される“ファスト・ファッション”の流行。」等から、クリーニング店での取り扱い量自体が減少。「一着の服を長く着るのでは無く、着倒したらクリーニングに出さずに、新品を安く買う。」という、消費者の意識の変化も在るのだろう。
そして、追い打ちを掛けたのがコロナ禍。外出自粛や在宅勤務の増加により、洗濯し難いスーツ、カシミヤ等のデリケートな素材の御洒落着のクリーニング店持ち込みが激減。原油価格高騰による価格引き上げも、客離れに繋がった。
総務省の調査では、「2人以上世帯の洗濯代の年間支出額は、1992年の1万9,243円をピークに大きく減り、2020年以降は4千円台で推移している。」そうだ。「店主の高齢化、跡継ぎ不在、進む客離れ、そんな環境で、決して安くは無い機械設備を新たに“購入”するのは無理。」と、廃業を決断する店主が多いとか。