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孤島に集まったのは、厳格な審査を経た選りすぐりの美女達。巨万の富を築いたIT業界の寵児、桐生高雄(きりゅう たかお)の花嫁を決める選抜大会が開かれるのだ。
勝者には、莫大な富と世界的名声を誇る桐生の花嫁の座が保証される。4日間のサヴァイヴァルを勝ち抜くのは、果たして誰か?元アングラ格闘家の二毛作甘柿(にもうさく あまがき)を始め、個性豊かな女性達が繰り広げる、壮絶な婚活バトル。戦いの幕が、切って落とされる!
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第11回(2012年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の2次選考通過作品で、受賞はならなかったものの、昨年、隠し玉として文庫本で上梓された「婚活島戦記」(著者:柊サナカさん)。
選考委員の1人・大森望氏は巻末の解説で、「『このミステリーがすごい!』大賞の選評でも、選考委員は挙ってアマガキの造形を絶賛。設定が独創性に欠けるという事で授賞はしなかったものの、本書を隠し玉として刊行する事には、全員が賛成していた。其の意味では、最初から隠し玉として選ばれた作品だったとも言える。逆に言うと、何等かの形で此の小説を出版しない訳にはいかないと、原稿を読んだ人間皆に思わせる程、二毛作甘柿の存在感が素晴らしかったので在る。」と記している。
小説「バトル・ロワイアル」を思い起こさせる設定。良くも悪くも「バトル・ロワイアル」は衝撃的な内容だったが、此の「婚活島戦記」には二番煎じ、三番煎じな感じが否めない。「独創性に欠ける。」というのは、そういった点を指しているのだろう。
正体が良く判らない桐生高雄に付いて、幾つかの疑問(一族が、早死にしている理由等。)を持たせるも、結局、何だったのか判らない儘だったりと、著者だけが納得しているだけで、読者を置いてけぼりにしている様な所が、消化不良を起こさせる。甘柿以外のキャラクター設定は特筆すべき物が無く、選考委員達が絶賛した甘柿のキャラクターも、自分には大して魅力的に思えなかった。
そうそう、「東京島」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/e4199cd48201fa146d0c05398c2a04e6)の逆ヴァージョンとも言えますね。同小説は「アナタハンの女王事件」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%82%BF%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E4%BA%8B%E4%BB%B6)をモチーフにしているとされていましたので、興味を惹かれて手に取ったのですが、個人的には残念内容でした。