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大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條泰己(さいじょう やすみ)。其処へ、ドイツ帰りの天才医師・真木一義(まき かずよし)が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用い無い手術を、途轍も無い速さで完遂する。
或る時、難病の少年の治療方針を巡って、2人は対立。「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。
そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。大学病院の闇を暴こうとする記者は、「ミカエルは、人を救う天使じゃ無い。偽物だ。」と西條に迫る。
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柚月裕子さんの小説「ミカエルの鼓動」は、 “医療の在り方”と“命の意味”を問う作品。「“患者にとって最適な医療”を目指す為には、手術支援ロボット『ミカエル』の普及が必須。」と信じ、其の推進に情熱を燃やす西條の周りで、次々と“異変”が発生し、其の理由を捜し求めて行くと、ミカエルに関する或る事実が明らかとなる・・・というストーリー。
どんなに優れたモノで在っても、“絶対”という事は無い。モノが人で在ろうと、機械で在ろうと、其れは例外では無い。では、「其のモノが、絶対では無い。」と判った時、当事者はどうすべきなのか?そんな問いを投げ付ける作品。
「医療の進歩の為には、或る程度の犠牲は止むを得ない。」と主張する人が居る。判らないでは無い主張だけれど、では、其の犠牲が自身、又は自身の愛する人に及ぶ事が判っていても、同じ主張を出来るだろうか?正義やエゴ等、人は様々な事に心を惑わされ、そして決断を迫られる。
個人的には、結末に残念さを感じる。「大きな2つの決断を下した西條の今後が全く読め無い。」し、「表面的には全く相容れない雰囲気だが、本質的には非常に似た部分を持つ真木との関係性が、中途半端な感じで終わってしまった。」様に感じられるので。
総合評価は、星3つとする。