
Excite Bitに載っていた記事「『懐かしい匂い』に関する考察」で、「プルースト効果」というのを知った。マルセル・プルースト氏が著した小説「失われた時を求めて」の中で、「主人公がマドレーヌを紅茶に浸し、其の香りを切っ掛けとして幼年時代を思い出す。」という描写が在り、此処から「嗅覚や味覚から、昔の記憶が呼び覚まされる事。」をプルースト効果と呼ぶ様になったのだとか。「『懐かしい匂い』に関する考察」の中で筆者は、自身のプルースト効果に付いて、次の様に記している。
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先日、所用で感染症の予防接種を受けた。看護婦さんに腕を捲られ、ガーゼで腕を消毒された時、久々に嗅いだ消毒用アルコールの匂いに、物凄く懐かしい気持ちになった。小学生の頃に受けた予防接種で、授業中にソワソワし乍ら注射の時間を待つ不安感とか、注射の順番を目前にし、怖くて泣きそうだけど友達が居る手前強がる強情さとか、注射が終わり、「大した事ねえな。」と矢っ張り強がり乍らも隠せない安堵感、そういう昔の記憶がぱっと蘇り、非常にセンチメンタルな気持ちになっていたら、何時の間にか注射が終わっていた。
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「消毒用のアルコールの匂いで、幼少期に受けた予防接種の記憶、其れも嫌な記憶が蘇る。」というのは、非常に判る。唯でさえ「腕にブスリと注射針が刺されるのが嫌で堪らない。」というのに、「血管が細くて判り辛い。」という事で何度も何度も注射針を突き刺されるケースが多かった事も在り、予防接種にはトラウマめいた物が在る。だから良い大人になった今でも、消毒用のアルコールの匂いを嗅ぐと、昔を思い出して嫌な気持ちになってしまうので。
同記事では、「ふと昔を思い出してしまう匂いランキング」(gooランキング)の結果を紹介している。
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「ふと昔を思い出してしまう匂いランキング」
1位: プールの消毒剤の匂い(100)
2位: 天日で乾かした布団の匂い(97.8)
3位: 御線香の匂い(94.7)
4位: 祖父/祖母の家の匂い(70.2)
5位: 古本屋の匂い(69.8)
7位: 田圃の匂い(67.6)
8位: 焚き火の匂い(61.3)
9位: 潮の匂い(60.0)
10位: 注射のアルコール綿の匂い(51.6)
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自分の場合で言えば、一番にパッと頭に浮かぶのが「祖父/祖母の家の匂い」。畳の匂い、箪笥等の木の匂い、樟脳の匂い、黴臭さ、そして生活臭等が入り混じった、嗅いでいると心が沈静化されて行く匂いだ。
又、黴臭さは「古本屋の匂い」というよりも、「昔の図書館の匂い」という印象が自分の場合は強い。幼少期より本が大好きだったので、此れも嫌な臭いでは無い。
図書館や古本屋の本の臭いは、かび臭いというより変に甘ったるい臭いだと感じます。香水のようなフローラルな甘さではなく、なんともたとえにくい、しかし不快でもない臭い。出どころも、置いてある期間も、司書さんや店員さんも、読んだ人もさまざまなのに、なぜどこの図書館でも古本屋でも同じ臭いなのか不思議です。多くの人の手垢の臭いが混ざり合うと平均化されるのか、それとも、かび臭くならないように館内に撒く、古書を扱う施設用の芳香剤があるのか。謎です。
今からウン十年前、幼かった自分は名古屋の片田舎に住んでいました。都心に比べると、数年は時間が遡った様な田舎で、民家にゴキブリどころか鼠が入り込んだりしていた在り様。土間等には町内会から配布されたピンクの殺鼠剤が、そして外の側溝には蛆等を駆除する為の白濁色の薬品が撒かれていたりしたもの。あの白濁色の薬品・・・クレゾールの匂いは、自分も忘れられないですね。