「認知症に罹患した男性(当時91歳)が徘徊中に電車に撥ねられ死亡した件で、JR東海が男性の家族に損害賠償を求めていた訴訟。」に付いては、2年前の記事「認知症患者を巡るニュース」等で取り上げていたが、今月1日、「男性の妻に対して約360万円の支払いを求めた二審の判決を破棄し、『認知症の人の監督責任が問われないケース“も”在る。』として、“今回の件に関しては”男性の家族が損害賠償責任を負わない。」という趣旨の最高裁判決が下された。
「認知症患者が関わった事件や事故に関して、全ての場合、其の家族に損害賠償責任が無い。」という訳では無く、飽く迄も「状況によって、賠償責任を限定的に解釈する考えが在る。」事を明らかにした訳だが、今回の件に関して言えば、「男性の家族に損害賠償を求めるのは気の毒。」と思っていたので、良い判決だったと考えている。
「認知症に罹患した祖父の介護に、祖母達が大変苦労した。」というのを聞かされた身としては、認知症に関する問題は他人事に思えない。又、“超高齢社会”に突入した我が国では、「今後、認知症患者が激増し、社会はどうなってしまうのか?」と不安を持つ人は、自分だけでは無いだろう。でも・・・。
3月1日付けの日刊ゲンダイに、興味深い記事が載っていた。「医者も知らない医学の新常識」という連載の18回目に医者の石原藤樹氏が、世界5大医学雑誌の1つで在る「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で2月に発表された論文を紹介しているのだが、其れによると「1970年代後半の年齢別の認知症の発症率と比較して、2000年代後半の認知症の発症率は、同じ年齢では44%も低下していた。」との事。詰まり、此の30年間で、認知症は半分位に減っているという事になる。
元の論文を確認していないので、何処の国を対象にした調査結果なのかは判らないけれど、石原氏によれば「そういう事実を示すデータが、特にアメリカで多く報告されている。」と言う。
認知症の診断法は日進月歩で、且つ一般の人も認知症の初期症状には敏感になっている事から、昔に比べてより多くの認知症患者が見付かっても不思議では無い。なのに、認知症患者の数が大幅に減っている。「其の原因が何なのか?」に付いては、残念乍ら現段階では突き止められていないが、「何等かの生活環境等の変化が、認知症の減少に繋がっているのでは?」と考えられているそうだ。原因が究明されれば、認知症で苦しむ人をもっと減少させられるだろう。
「経済格差の拡大」というのは日本に限った事では無く、世界中で見られる事ですが、経済格差の拡大は様々な“負の面”を生み出していますよね。一番の負の面は「教育の欠如」で、此の事で「食の安全に対する知識の欠如」にも繋がっている様に思うし。
「一般的な意識の変化が、認知症発症の割合の減少に繋がっている。」というのは、考えられない要素では無いものの、唯、“44%減少”という大幅な変化を生んだ要素としてはどうかなあという気もしています。
何はともあれ、認知症に苦しむ患者達、そして其の家族の多さを思うと、一日も早く原因が究明されて欲しいものです。
食の安全であれば、格差のある家庭ほど、肥満率は高いですし、肥満、糖分の過剰摂取から精神的な病の主たる原因になっていると。癌の病原でさえ、血液から分かりますが、認知症は生活のプロファイリングが必要でしょう。つまり、それだけ手厚い看護体制が必要で、過失や危険を起こす可能性もあるのだから、まとまった管理も已む無しだと思います。ライフスタイルの変化を受けて、日本人の老成に伴った、疾病者の増加、少子高齢化で、観る辺(みるべ)のない人々が増える前に。