
「セ・リーグではタイガースが、そしてパ・リーグでは(南海)ホークスが優勝。」、「ビートルズが初訪米。」、「エドウィン・O・ライシャワー駐日アメリカ大使が、日本人少年に刺されて負傷。(ライシャワー事件)」、「日本人の海外観光渡航自由化。」、「東海道新幹線開業。」、「池田勇人首相が退陣。」。これ等は全て1964年(昭和39年)の出来事。そして何と言っても我が国にとって大きな出来事だったのは、アジア初のオリンピックで在る「東京オリンピック」の開催だろう。「東京体育館」(体操競技用会場)や「国立代々木競技場」(水泳競技用会場)、「渋谷公会堂」(重量挙げ競技用会場)、「日本武道館」(柔道競技用会場)等が完成したのもこの年。1945年にポツダム宣言を受け入れて無条件降伏した日本を、当時のダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官は「日本は四等国に転落した。」と言ったそうだが、それから19年経って劇的な復興を見せ、「我が国も一等国の仲間入りをしたのだ。」とアピールする一大イベントが、この東京オリンピックと言っても良かろう。
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昭和39年夏。10月10日に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつ在る首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人として居ない。そんな気運が高まる中、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する。」という脅迫状が当局に届けられた。1962年から1963年にかけて発生した爆破等の凶悪事件「草加次郎事件」。「世間を震撼させたこの未解決事件の再開か?」と響めく警察。
しかし、この事件は国民に知らされる事が無かった。国家の威信を懸けても、何事も無くオリンピックを成功させなければならない。」と、警視庁の刑事達に極秘捜査が強いられたからだ。やがて捜査線上に一人の東大生の存在が浮かび上がり・・・。
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1959年生まれの作家・奥田英朗氏。彼が著した「オリンピックの身代金」を読破した。“この時代”に関して、非常に綿密な取材を行ったのだろう。それ程、行間から「昭和39年の匂い」が読み手に伝わって来る。草加次郎事件を始めとして、実際の出来事が其処彼処に盛り込まれている事で、「東京オリンピック開催妨害を目論む若きテロリストと、警視庁の刑事達との間で繰り広げられる虚々実々な戦い。」が実際の話の様にすら感じられる程。
「国際的なイベントを開催する上で『外国人に“見栄えの悪い”部分を見られては恥。』と、不衛生な建物や人々を排除する。」、「一等国の仲間入りを焦る余り、深刻な環境破壊を露呈して行く。」、「地方では口減らしの為、幼くして都会へ集団就職させられたり、芸者や飯炊き女として身売りされる。」等々、昨年オリンピックを開催した何処ぞの国の様な光景が我が国でも40数年前に存在していたというのは、若い世代にとって衝撃的かもしれない。「敗戦から19年“も”経っているのに、そんな状況だったとは。」と捉えるべきなのか?それとも「敗戦から僅か19年“しか”経っていないのだから、然も在りなん。」と捉えるべきなのか?
小説の中で奥田氏は、或る“エリート”に下記の言葉を吐かせている。我が国の現在の状況を考え合わせると、実に意味深な言葉だ。
「仕事をしているつくづく思うんですが、日本の弱点は雇用システムの硬直性にありますね。アメリカなんか、賃金の安い移民を自由に雇ったり解雇したりできるから、建設業界のダイナミズムがちがうんですよ。日本は遅れてるなあ。木を見て森を見ないとはこのことだ。」
繁栄の象徴とも言える道路や建物を作り上げる一方で、少なからずの労働者達が事故で命を落としている現実。作品の中では米村という若い労働者を含む3名が事故死しているのだが、それに付いて「驚くことに、人が三人も死んだというのに、(新聞は)写真すらないベタ記事だった。死亡者の名前もない。米村という一人の若者は、経済成長の最中、ただの人柱として葬り去られた。この命の安さは何なのか。」と、別の“エリート”に遣り切れない思いを抱かせてもいる。
「公安部」対「刑事部」と内部に軋轢を抱えつつ、“犯人”を次第に追い込んで行く展開に引き込まれて行く。読後に“犯人”に対する共感めいた思い、又、「組織」の中に於ける「個人」の無力さを感じる読者も結構居るのではなかろうか。
ストーリーが良く練り込まれており、実に読み応えが在る。定価1,800円(税別)を支払っても、充分元が取れる面白さ。総合評価は星4つ。
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昭和39年夏。10月10日に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつ在る首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人として居ない。そんな気運が高まる中、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する。」という脅迫状が当局に届けられた。1962年から1963年にかけて発生した爆破等の凶悪事件「草加次郎事件」。「世間を震撼させたこの未解決事件の再開か?」と響めく警察。
しかし、この事件は国民に知らされる事が無かった。国家の威信を懸けても、何事も無くオリンピックを成功させなければならない。」と、警視庁の刑事達に極秘捜査が強いられたからだ。やがて捜査線上に一人の東大生の存在が浮かび上がり・・・。
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1959年生まれの作家・奥田英朗氏。彼が著した「オリンピックの身代金」を読破した。“この時代”に関して、非常に綿密な取材を行ったのだろう。それ程、行間から「昭和39年の匂い」が読み手に伝わって来る。草加次郎事件を始めとして、実際の出来事が其処彼処に盛り込まれている事で、「東京オリンピック開催妨害を目論む若きテロリストと、警視庁の刑事達との間で繰り広げられる虚々実々な戦い。」が実際の話の様にすら感じられる程。
「国際的なイベントを開催する上で『外国人に“見栄えの悪い”部分を見られては恥。』と、不衛生な建物や人々を排除する。」、「一等国の仲間入りを焦る余り、深刻な環境破壊を露呈して行く。」、「地方では口減らしの為、幼くして都会へ集団就職させられたり、芸者や飯炊き女として身売りされる。」等々、昨年オリンピックを開催した何処ぞの国の様な光景が我が国でも40数年前に存在していたというのは、若い世代にとって衝撃的かもしれない。「敗戦から19年“も”経っているのに、そんな状況だったとは。」と捉えるべきなのか?それとも「敗戦から僅か19年“しか”経っていないのだから、然も在りなん。」と捉えるべきなのか?
小説の中で奥田氏は、或る“エリート”に下記の言葉を吐かせている。我が国の現在の状況を考え合わせると、実に意味深な言葉だ。
「仕事をしているつくづく思うんですが、日本の弱点は雇用システムの硬直性にありますね。アメリカなんか、賃金の安い移民を自由に雇ったり解雇したりできるから、建設業界のダイナミズムがちがうんですよ。日本は遅れてるなあ。木を見て森を見ないとはこのことだ。」
繁栄の象徴とも言える道路や建物を作り上げる一方で、少なからずの労働者達が事故で命を落としている現実。作品の中では米村という若い労働者を含む3名が事故死しているのだが、それに付いて「驚くことに、人が三人も死んだというのに、(新聞は)写真すらないベタ記事だった。死亡者の名前もない。米村という一人の若者は、経済成長の最中、ただの人柱として葬り去られた。この命の安さは何なのか。」と、別の“エリート”に遣り切れない思いを抱かせてもいる。
「公安部」対「刑事部」と内部に軋轢を抱えつつ、“犯人”を次第に追い込んで行く展開に引き込まれて行く。読後に“犯人”に対する共感めいた思い、又、「組織」の中に於ける「個人」の無力さを感じる読者も結構居るのではなかろうか。
ストーリーが良く練り込まれており、実に読み応えが在る。定価1,800円(税別)を支払っても、充分元が取れる面白さ。総合評価は星4つ。

オリンピックの開催地、自分も出来る限り初めての国を優先させた方が良いと思います。百歩譲って日本で開催するにしても、又、東京というのもどうかと。
唯、ブラジルは治安の問題がかなりネックになりそうな気がします。それを何処迄クリア出来るかではないかと。
終戦直後から高度経済成長期辺り迄は、民主主義国家の“先輩”としてアメリカから学ぶ事は多かったし、盲目的な追従でも何とか国は上昇を続けられた。しかし今や、盲従していればそれで全て上手く行く時代では無くなった。日本には日本に合った手法というのが絶対在る筈だし、これからはアメリカを含めた海外から良い所は積極的に取り入れて行く一方で、日本の良き部分は矜持を持って残して行くというスタンスがベターだと自分も思います。
奥田英朗氏の作品は例の精神科医、伊良部シリーズしか読んだことがありません。 とにかく注射を打ちたがるへんてこな医師とセクシー看護婦の笑えるシリーズ。 近作はシリアスですね。
昨年北京でやったところなので
「アジアが続く」という印象をもたれるような
気がするのですが・・
昭和39年の東京オリンピック開催には「国威発揚」と「景気浮揚」という意味合いが在り、それは上手く果たせたと思うんです。2016年のオリンピックを東京で開催した場合、既存施設を有効活用するので、それ程の費用は掛からない。」と石原都知事は胸を張っている様ですが、それでも莫大な税金が費やされるのは間違い無いだろうし、何よりも梅吉様が書かれている様に「これが出来れば、全て上手く行く。」といった主張をしていた筈の新銀行東京があのザマですから、とても説得力を感じない。東京開催で一時的な景気浮揚はするだろうけれど、長い目で見たら「負の遺産」を残すのではないかという懸念も感じますし。
公営ギャンブルはしっかり運営出来れば良いのですが、何しろこういった組織には「天下り」や「紐付き企業への受注」といった不明朗な部分がやたらと付いて回る我が国ですから、その辺を法律で縛らないとまずいかと。
昭和50年代なんて自分からすると「ついこの間」という感じもする訳ですが、もう30年以上経つんですよね。食の安全が声高に叫ばれていますが、自分が幼かった頃はかなり怪しげな食材が普通に売られていたし、昭和50年頃もそういった物が結構残っていました。
戦前から昭和20年代迄の間に生まれて来た人達にとって昭和30年代以降は、「取り敢えず食べられる。」という環境だけで充足出来た部分が在ったのではなかろうかと。又、昭和30年代以降に生まれた世代には、高度経済成長期を経てバブル経済を体感した事で、「取り敢えず自民党に依存していれば、何とか生きて行ける。」という「寄らば大樹の陰」的な思いを持つ人が少なくなかったのではないでしょうか。色々問題は在ったにせよ、嘗ての自民党はそれなりに機能していた。しかし長年政権の座に留まり続けた事で、組織に“緩み”が生じ始め、今や「弛緩し切っただけの組織」に成り下がってしまった様に感じます。
ただ、走ろうとは思いませんが。
税金の無駄遣いでしょ、これも。
東京オリンピックって。
東京都も大赤字なのに大丈夫かよ
と、思うのですが。
昭和39年当時は東京も地方も
まだ、いざなぎ景気の頃で
東京オリンピックの開催が
東京の経済、東京の景気、東京の血液→循環
を活性化したんですから。
反対する理由なんてないわけですよ。
反対派の人は後悔したと、思いますよ。
でも、いまはねえ。
石原都知事、石原都政が東京都を大赤字に
させているわけですから。
ロサンゼルスオリンピックは
1円の税金を使わずに開催されたと
いわれていますが。
東京都の場合はどうなのかな。
たくさん税金使うと思いますよ。
福祉、社会保障ないがしろにしてまで。
そういったのは後回しだ、と
いま、いや、これから2016年の開催まで 多くの都民が反対してもやるのだ。
と、石原都知事や東京都の官僚は
企んでいるのしょう。
新銀行東京という目的、目論見を大きく
外した銀行作って大赤字にさせてるのにね。
いまは東京都も新銀行東京が原因の大赤字
大型公共事業が原因の大赤字出してるんですから、あと、元、都知事の美濃部氏→故人の
都営ギャンブル廃止が大赤字の元凶
と、いう感じもするのですが。
公営ギャンブル自体はそんなに悪いとは僕は
思わないんです。
そりゃ昔は八百長騒ぎもありましたけど
福祉に使うのは好ましくないのなら
ギャンブルの収益金を福祉、社会保障目的に
使わなきゃ良いんですよ。
宝くじと同じですよ。
大型公共事業に使いたいのなら
宝くじ、ギャンブルの収益金だけで
行えば良いと、考えているほどです。
宝くじの裏面に記載されていますが
宝くじの収益金は大型公共事業に
使われると、ちゃんと記載されているんです。
ギャンブルを福祉、社会保障に使うのは
断固反対ですし
そういうことをしてお年寄り、福祉の現場で
働いている人はたぶん、喜ばないでしょうから。
東京都の固定資産税を福祉、社会保障費に
使うべきです。
お年寄り、低所得者層は本当にお金が
少ないわけだし暮らしに困っている人が
多いのですから。
いずれにしてもいまは
そうでなくても
公営競馬、競輪、競艇などは自治体が赤字で
やむなく廃止、または撤収の状態が
続いていますが。民営、私営で運営している
地方競馬場、競輪場、競艇場もあるようですが。
いまは、東京オリンピック開催は反対です。
こういうことにムダな税金は
使ってほしくないから。
>国際的なイベントを開催する上で『外国人に“見栄えの悪い”部分を見られては恥。』と、不衛生な建物や人々を排除する。」、「一等国の仲間入りを焦る余り、深刻な環境破壊を露呈して行く。」、「地方では
そうですね、正直言って昭和50年ぐらいまでそういう空気がありました。
しかし、今私が知る「地方では口減らしの為、幼くして都会へ集団就職させられたり、芸者や飯炊き女として身売りされる。」←この層、今は戻ってきて自営業者になっていたり、地元の工場の工員、建設作業員、女性ならばやはり主婦兼工場のパート、清掃婦等になっていたり、まあ年齢的に引退していたり(それでもこの層はよほどの大病でもしない限り引退しないのですが)。で、多くが無年金だったり、例の社保庁の記入洩れ事件でに該当者になっている人たちです。
しかしこの層はどういうわけか自民党に入れ続けたり、あるいは選挙に行かなかったり。社会党や共産党をアカと蔑んだりする人が少なくありません。
農林水産業従事者が自民党大好きってのは結構分かる話なんですけどね…。
今の社会について「あんたらが選んだんだから自己責任」という気持ちもありますが、
「反パク運動」であったり、あるいは「アカの人たち」、あるいは私の年上の従兄弟のように同和問題活動家になったばかりに疲弊してしまった人、といった人々はなぜこの層に共感されなかったのか、この辺は複雑だし、実は自分にとってこれをどう理解するのか、結構長年のライフワークだったりもします。
>日本の弱点は雇用システムの硬直性にありますね。アメリカなんか、
アメリカは全く変わっていないのだが、日本は40年たってこれを取り入れていますね。
もっとも当時の日本の建設作業員の労働環境、相当劣悪と思いますが。