青柳碧人氏は過去に「日本の昔話(「一寸法師」、「花咲か爺さん」、「鶴の恩返し」、「浦島太郎」、「桃太郎」)を基にしたミステリーの『むかしむかしあるところに、死体がありました。』」、「同じく日本の昔話(「竹取物語」、「おむすびころりん」、「わらしべ長者」、「さるかに合戦」、「かちかち山」、「分福茶釜」)を基にしたミステリーの『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』」、そして「西洋の童話(「赤ずきん」、「シンデレラ」、「ヘンゼルとグレーテル」、「眠れる森の美女」、「マッチ売りの少女」)を基にしたミステリーの『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』」を著して来た。
今回読了した「赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。」は西洋の童話を基にしたミステリーの第2弾で、「赤ずきん」、「ピノッキオの冒険」、「親指姫」、「白雪姫」、「ハーメルンの笛吹き男」、「ブレーメンの音楽隊」、「ほら男爵の冒険」、そして「三匹の子豚」を題材にした4つの短編小説+幕間で構成されている。
全体を通して言えば、「頭部、右腕、左腕、胴体、右足、左足と6分割されたピノキオの“身体”を捜し求め、赤ずきんがピノキオ(最初は右腕だけ)と共に旅する。」というストーリー。「旅を続け、自分の肉体を取り戻して行く。」というのは、手塚治虫氏の作品「どろろ」を思わせる。
バラバラにされてはいても、他のパーツとの感覚は繋がっている様で、例えば「ピノキオの右腕がペンを持ち、ピノキオの目が見ている(見た)光景を記す。」なんて事も出来るのだ。そういう感覚の繋がりが、赤ずきんに謎を解くヒントを与えたりする。
一番面白かったのは「第2幕 女たちの毒りんご」で、タイトルからも判る様に「白雪姫」を題材とした内容。題材としている童話を良く知っていると、「そういう事だったのか!」と騙される可能性は高いと思われ、「第2幕 女たちの毒りんご」なんぞは、其の最たる例だろう。
トリック的には、そう驚かされる物は無いが、“誰もが知る童話とミステリーの融合”という取り組みは面白い。「オリジナルの童話では、こういう展開になる。」という“先読み”をしてしまうからこそ、見事に騙されてしまう事も在るから。
総合評価は、星3.5個とする。