「ざんねんないきもの事典シリーズ」を読むと、「世の中には、変わった生き物が多いんだなあ。」と熟思う。現在迄に同シリーズは7冊上梓されており、今回は最新作の「おもしろい! 進化のふしぎ やっぱりざんねんないきもの事典」を読んだ。相変わらず「へー。」と思わされる内容だったが、特に面白かった物を幾つか紹介する。
① グンタイアリ
集団で歩き乍ら暮らしており、ばらばらにならないのは、前の蟻が出す匂い(フェロモン)を、後ろの蟻達が辿っている為。先頭の蟻が真っ直ぐ歩いている分には良いのだが、ぐるりとターンした場合、行列がドーナツ状になってしまい、同じ所をグルグル回り続けてしまう。円の中心には、抜け出せなくなった蟻の死体の山が出来る。
② ビンツロング
「南アジアから東南アジアの森林に入ると、バター・ポップコーンの香ばしい匂いが漂って来る。」事が在るそうだ。此の匂いの正体は、ジャコウネコの仲間で在るビンツロングの尿。周りに自分の存在を知らせる為、彼等は木や道に尿を掛けるのだが、此の尿の匂いの元は「2-AP」という物質。ポップコーンの粒も熱すると、化学反応により、同じ2-APが発生するのだとか。
③ 精霊蝗虫
全国の草地で見られる、国内最大級の蝗虫。捕まえられると、口からドロッとした茶色い液体を吐くが、此の液体の正体は「食べた草や葉等の未消化物」、詰まり「げろ」。「ストレス説」や「敵の目を欺く説」等、げろを吐く理由は色々出されているが、はっきりした事は判っていないそうだ。非常に臭い事は確か。
④ ガラガラヘビ
夜行性のガラガラヘビは、夜になると栗鼠等を狩って食べる。顔に在る「ピット器官」という小さな穴は、周りの温度差を敏感に感じ取る事が出来、暗闇でも暗視スコープの様に、獲物の身体が浮かび上がって見える。だが、カリフォルニアに生息する栗鼠は、ガラガラヘビの此の能力を逆手に取って、或る“技”を身に付けた。ガラガラヘビが子栗鼠を食べ様と近付くと、親栗鼠は尾を激しく左右に振り、急激に温度を上げる。するとガラガラヘビは「とんでもなく巨大な物が遣って来た。」と勘違いし、一目散に逃げて行くと言う。
⑤ 大道走
砂漠地帯に生息している鳥・大道走は、時速36kmものスピードで走る事が出来るものの、飛ぶのは大の苦手という変わり者。飛べても、極めて短い距離な為、高い所に巣作りは出来ない。かと言って、地面に巣を作れば、肉食動物の餌食になってしまう。其処で彼等は、チョヤサボテンの茂みに巣を作る。「刺刺の仙人掌の中なら、敵も手を出せない。」という訳だが、自身の身にも痛い棘が刺さるのは避けられない。
⑥ カカポ
ニュージーランドの森林に生息するカカポは、飛ぶ事を止めて、地上を歩く様に進化した鳥。ニュージーランドには元々、肉食獣が居なかった為、飛んで逃げる必要が無かった。だが、約千年前に人間が遣って来て、食用や衣服にする為に彼等を次々に捕まえて行き、加えて人間が持ち込んだ猫や鼠にも狙われる事になったので、一時期は生息数が50羽近く迄激減。現在は保護され、百数十羽迄増えたが、絶滅の危機に在る事には変わりが無い。カカポは敵に捕まり易いそうで、其の理由は「危険を感じると、身体が固まり、動けなくなるから。」とか。狸と一緒だ。
⑦ 蚕
絹糸を取る為、人間が品種改良した蛾。羽と筋肉が退化して、飛ぶ事は出来ない。其れなのに、蚕の雄は羽をバタバタ動かす。「蚕の雌は、パートナーの雄を引き寄せる匂い物質を出すが、雄は匂いを余り感じ取れない。なので、羽撃いて風を起こし、匂いを沢山感じて、雌の居る場所を見付けようとしているから。」と言われている。
⑧ ノドジロオマキザル
ノドジロオマキザルは、偶に仲間の鼻の穴に指を突っ込む事が在る。此れは「鼻の穴に指を突っ込まれても、相手が怒らないかどうか。」を見て、友情度を確かめているのだとか。他にも相手の口を抉じ開ける、毛の束を毟って口に入れてみせる等、嫌がらせの様な行動を取る事も在るが、遣られた相手は満足そうな顔をしているそうだ。又、子供は小枝や毛の束等、役に立たない“プレゼント”を贈り合う。全く意味不明な行動だ。
冒頭のグンタイアリの所を読んですぐに頭に思い浮かんだこと。
人類も文明の夜明けのどこかで先頭が道を間違えて、同類間で殺し合い(戦争)を延々と続ける円環に迷い込んでしまったのではないかと。
自身の力で抜け出せればいいけれど、それこそ「神」や高度な文明を持った「宇宙人」の助けが無ければ、この自滅の連鎖から抜け出せないのか。
人類の自滅の連鎖、個人的には「歴史から学ぶという習慣を持った人間が一定数以上増えない限り、此の連鎖から抜け出せない。」様な気がします。そういう習慣を持たないと、人類の過去の過ちに気付かない物ですから。