ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「憑神」

2007年07月23日 | 映画関連
****************************
時は幕末動乱の時代。学問所では旧友の榎本武揚と並ぶ優秀さを誇り乍ら身分制度に縛られ身動き出来ないでいる下級武士の別所彦四郎(妻夫木聡氏)。婿養子先からも離縁され、兄夫婦の家に居候という肩身の狭い思いをしていた。

或る日、彦四郎は榎本武揚と再会する。自分とは異なり、立身出世を遂げた榎本を見送る彦四郎に、蕎麦屋の親父・甚平(香川照之氏)は「榎本が出世したのは、向島に在る『三囲り(みめぐり)稲荷』御参りしたからだ。」と言う。

その帰り道、泥酔した彦四郎は「三巡り(みめぐり)稲荷」を発見。ここぞとばかりに神頼みする彦四郎だったが、それは同じ「みめぐり」でも表記の異なる、災いを呼び寄せる御稲荷様だった。そして彦四郎の前には貧乏神の伊勢屋(西田敏行氏)、疫病神の九頭龍(赤井英和氏)、死神のおつや(森迫永依さん)が次々と取り憑いて・・・。
****************************

その作品が次々に映像化され、「彼の作品は人を呼べる。」と称されている作家・浅田次郎氏。そんな彼の作品「憑神」が映画化されたので、遅まき乍ら映画館に足を運んでみた。映画化された彼の作品を観るのは、「壬生義士伝」に次いで2作品目。(「鉄道員」も「地下鉄に乗って」も観ていない。)

「将軍の影武者を代々務めて来た由緒在る家柄」というのが誇りの母・イト(夏木マリさん)。武家意制度が崩壊して行く時代の流れの中、武士の身分や役職に早々と見切りを付け、享楽的な生活に浸る兄・左兵衛(佐々木蔵之介氏)。夫の自堕落さ、そして居候の身で在る義弟に頭を悩ませている兄嫁・千代(鈴木砂羽さん)。そんな家族に囲まれ、不遇託つ彦四郎の身に降り掛かった災い。貧乏神から「知己に災いを振り替えれば自らが助かる。」と教えて貰い、自分を裏切った元義父(石橋蓮司氏)に振り替えをするも、その不幸な結果に自分を責めてしまう御人好しの彦四郎。死神が振り替えを許諾するも、最後は「武士として忠義の為に死ぬ道」を選んでしまう。滅びの美学に魅せられてしまう自分としては、ホロッとさせられる展開では在った。

脇を固める俳優の上手さが光っている。西田敏行氏や石橋蓮司氏、夏木マリさん、佐々木蔵之介氏、そして何と言っても香川照之氏の演技が素晴らしい。「功名が辻」でも香川氏の演技に見惚れてしまったが、デビューした頃は単なる七光タレント(市川猿之助[三代目]氏と浜木綿子さんの子息故、「十四光」というのが正しいかも。)という位置付けでしか捉えていなかった自分の見る目の無さを恥じるばかり。死神のおつや役を演じていた森迫永依さんは実写版「ちびまる子ちゃん」で初代まる子を演じていたが、彼女も今年で10歳とは思えない程に演技が上手いし、彦四郎を兄と慕う小文吾役の佐藤隆太氏のコミカルな演技もなかなかだった。残念なのは主役の妻夫木氏の演技が、この作品では浮いていた様に感じられた事。若手俳優の中では顔立ちの端正さのみならず、演技力でも群を抜いた存在と彼を高く評価していただけに残念。

又、ストーリー自体も半ば位迄は小気味良さを堪能出来たが、それ以降は少々かったるさを感じないでは無かった。特に最後の付け足し(現代を描いた部分。)は不要だったと思う。

面白い作品だとは思うが、主役の演技力と半ば以降のストーリーのかったるさを減点し、総合評価は星3つ

コメント (4)    この記事についてブログを書く
« 被災者への気遣いの無さ | トップ | 57歳の投球に球場が沸いた »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (アラメイン伯)
2007-07-24 15:36:03
僕も浅田次郎は大好きでこの本も読んだけど
映画化の話きいた時に妻夫木はイメージと違うって感じました。なんかサワヤカすぎる。

もっも時代劇は初めてでしょうから勉強にはなったと思いますが・・・
香川照之のほうが主役のイメージにはあう気がしますね。
返信する
貧乏神はいやだなあ (マヌケ)
2007-07-24 20:21:47
私も浅田次郎や山本一力の時代小説が好きです。 ただ、この「憑神」にそっくりな小説、神様でなくて幽霊が憑く話をそれ以前に読んだことがありまして、どことなし、ストーリーがそっくりで先が読めてしまって・・・。 映画はまだ見ておりませんが、観客動員には主役の彦四郎は妻夫木君をもってくることで中高年から若者も呼べるのではというマーケティングが推測できます。 佐藤隆太君とはローレライで回天搭乗員役のコンビが思い浮かび、息の合った配役ではないでしょうか。 確か羽田でしたか、成田でしたか、拡張工事でお稲荷さん撤去の作業で事故ありましたよね。 工事を請け負った会社では作業員の方の不慮の事故死などもあったそうで、お稲荷さんの祟りなんていわれましたよね。 人生、幸運と不運が同じだけもたらされるのなら、そろそろ幸運の神様が憑いてくれるころかなあなんて思ったりしています。 
返信する
>マヌケ様 (giants-55)
2007-07-25 00:00:32
書き込み有難う御座いました。

製作サイドが妻夫木氏を起用した理由は、マヌケ様の書かれた通りだと思います。個人的には彼の演技力を買っていますし、若手では”客を呼べる”数少ない俳優の一人だとも捉えているので、その意図は判るのですが、何故か今回の作品では彼の良さが感じられませんでした。同じ時代劇でも「どろろ」の時の妻夫木氏は良かったんですけどね。

御稲荷さん撤去でトラブルが続出したのは、確か羽田空港だったと思います。こんなに文明が発達した世の中に在っても、祟りという概念が浮んでしまうというのは面白いなあと感じたものです。
返信する
こんにちは~★ (とんちゃん)
2007-07-29 17:21:12
TB有難うございました♪
なのにお返しが遅くなってごめんなさい!

うっかり見逃してました(笑)

この映画は西田さんがツボにはまり前半大笑いしたので後半の展開に「うん???」でした^^

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。