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下町情緒溢れる 東京の谷根千(谷中・根津・千駄木) の路地裏に在る、隠れ家的雑貨屋「怪運堂」。明るさだけが取り柄の女子大生・岩篠つみれ(いわしの つみれ)は、ミステリアスな店主・竹田津優介(たけだづ ゆうすけ)の秘められた探偵の素質に気付く。部屋中の物が逆様になった謎等の怪事件を持ち込むと、竹田津は猫を構ったり寄り道許りし乍らも、鮮やかに真相を解き明かして行く。
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2010年辺りから、年間ミステリー・ランキングで良く名前を見掛ける様になった小説家・東川篤哉氏。10代の頃に好んで読んでいた赤川次郎氏を彷彿させるユーモラスな作風が特徴だが、“1人ノリツッコミの会話”にくどさを感じる等、少々苦手な部分が在ったりする。
「雑貨屋の店主と兄が営む居酒屋で働く女子大生が、谷根千で起きた事件を解決する。」という内容で、4つの短編小説から構成されている。鰯を使った料理がメインの居酒屋「吾郎」を営む兄が岩篠なめ郎(いわしの なめろう→鰯のなめろう)、其の妹が岩篠つみれ(いわしの つみれ→鰯のつみれ)と名付けられている時点で、ユーモア・ミステリーで在る事が判るだろう。
「足を踏ん付けていないのに、踏ん付けたと騒がれたのは何故か?」、「留守の間、何者かによって、部屋の様々な物が逆様にされたのは何故か?」、「風呂場で溺死していた男性の両足が、妙な形で死後硬直していたのは何故か?」、「逃走した犯人の姿が、煙の様に消えてしまったのは何故か?」という4つの謎。一番興味深かったのは、「部屋の様々な物が逆様にされていた。」という事件。「逆様」という言葉が持つ意味合いが、謎を解く大きなヒントになっており、そういう点では面白かった。
でも、“ミステリーとしての完成度”という点では、全体的にパッとしない。暇潰しに読むだけなら、まあまあ「在り。」なのだろうけれど・・・。
総合評価は、星2.5個とする。