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全編伏線とも言える「閉ざされた館の不可解な連続殺人」の真相を見抜く。早い者勝ち、「真相」が判れば何時でも、解答可能の争奪戦。勿論、“貴方”も参加OK。強豪達が次々退場していく中、其の裏で、何かが始まっていた・・・。
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「2016本格ミステリ・ベスト10【国内編】」では1位、「2015週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」では4位、そして「このミステリーがすごい!2016年版【国内編】」では6位に選ばれた小説「ミステリー・アリーナ」(著者:深水黎一郎氏)。
「TV番組『ミステリー・アリーナ』内で出題される1つのミステリーを、解答者として呼ばれた14人のミステリー・オタクが謎解きする。彼等が答えを出せるのは其れ其れ1回だけ。1つのミステリーが“章仕立て”で紹介されて行き、章と章の合間には、スタジオでの司会者と解答者達との遣り取りが入る。其の遣り取りの中で解答者達は答えを出す機会が与えられるのが、一番早く且つ正確に、真犯人及びトリックを答えられた1人だけが、賞金20億円を総取り出来る。」という設定。
ミステリー・オタク達だけに、其の答えはミステリーに良く在るパターンを踏まえ、重箱の隅を楊枝で穿った物許り。「そんな馬鹿な。」と思ってしまう様な指摘でも、其の理由を読むと、「其処迄深読みしているのか・・・。」と感心。
伏線の敷き方が尋常では無いし、“日本語の奥行きの深さ”を痛感させられる内容。「男性言葉で話していたけれど、実は女性。」といった読者を誤解させるテクニックは、ミステリーで良く使われるけれど、そういったテクニックが“日本語の奥行きの深さ”を利用して、次から次へと登場。一部ネタバレになってしまうけれど、例えば「彼は、ベッドの上で冷たくなっていた。」という記述が在れば、多くの人は「彼はベッドの上で“亡くなっていた”。」と理解するだろう。でも、「彼は、ベッドの上で冷たい態度を取った。」という、変化球的解釈”も、日本語では出来たりする訳で、思わず唸ってしまう。
此の小説を一言で言えば、実に馬鹿馬鹿しい。でも、馬鹿馬鹿しいというのは悪い意味では無く、良い意味でだ。日本語の奥行き深さを堪能出来る点だけでも、一読の価値在り。
総合評価は星4つ。