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場末の釣り堀「カープ・キャッチャー」には、「神」と称される釣り名人が居た。「釣った魚の種類と数によるポイントを、景品と交換出来る此の釣り堀で、最も高ポイントを必要とする品を獲得出来るとすれば、彼しか居ないい。」と噂されている。浅くて小さな生け簀を巡る細やかなドラマは、然し、どういう訳か、冴えない日々を送る6人を巻き込んで、大きな事件に発展して行く。
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直木賞作家の道尾秀介氏と劇作家でも在るケラリーノ・サンドロヴィッチ氏が、打ち合わせを重ねて1つのコンセプトを創り上げ、其れを元に出来上がった小説が「サーモン・キャッチャー the Novel」だ。
芸能界を見ていると、浮き沈みの激しさを感じてしまう。一世を風靡した者でも、何時の間にか表舞台から消えてしまう事は珍しく無い。そういう意味では、自分が子供の頃からずっと第一線で活躍し続けている石坂浩二氏なんぞは、「凄いなあ。」と思う。
作家も同様で、ずっと第一線で活躍するのは難しい。ヒット作を生み出したとしても、才能が枯渇して低迷する事も多い。実は道尾秀介氏にも、同じ懸念を持っている。昔は魅力的な作品を紡ぎ出していたけれど、7年前に上梓された「月の恋人 ~Moon Lovers~」辺りから、ガッカリさせられる作品が目立つ様に。直木賞受賞作「月と蟹」でさえも、個人的には魅力を感じなかったし。
今回読了した「サーモン・キャッチャー the Novel」は筋立て等を含め、伊坂幸太郎氏の作風に似ている。似ているけれど“深み”が無く、上っ面だけを似せている感じで面白く無いのだ。ストーリーを追う“視点”がちょこちょこ変わるのも、読んでいる側としては判り難い。
総合評価は、星2つとする。