「実在の事物や日常の中に、奇想天外な非日常性を持ち込むファンタジー小説で知られている。」というのが、万城目学氏の作風。ファンからは「万城目ワールド」と呼ばれているそうだが、自分が読んだ彼の作品は、記憶違いで無ければ「鹿男あをによし」だけ。正確に言えば「最初の方を少し読んだだけ。」で、「作風が、自分には合わないなあ。」と思って、読むのを止めてしまったのだ。
「実在の事物や日常の中に、奇想天外な非日常性を持ち込むファンタジー小説で知られている。」と言えば、三崎亜紀氏も似た感じで、「作品の評価が高かったので、何作か読み続けたけれど、作風が自分には合わなかったので読まなくなった。」というのが在る。
自分の場合、「こういう系の作品は苦手な様だ。」という思いが在り、「万城目作品を読む事は、もう2度と無いだろうな。」と思っていたのだが・・・。
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・都大路で女子全国高校駅伝のピンチ・ランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生・坂東(さかとう)の姿を描いた作品「十二月の都大路上下(カケ)ル」。
・借金の形に、早朝の御所グラウンドで草野球の「たまひで杯」に参加する羽目になった大学生・朽木(くちき)の姿を描いた作品「八月の御所グラウンド」。
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万城目学氏の小説「八月の御所グラウンド」を読了。「万城目作品を読む事は、もう2度と無いだろうな。」と思っていた自分だが、此の作品が第170回(2023年下半期)直木賞を受賞した事から、読まざるを得ない状況に。
「京都大学法学部卒業」という経歴を持つ万城目氏は、其の作品に「京都を舞台にした物」が幾つか在る。「八月の御所グラウンド」は「十二月の都大路上下(カケ)ル」と表題の2つの短編小説で構成されており、矢張り京都が舞台。
一部ネタバレになってしまうが、何方の作品も“此の世の物では無い存在”が登場し、其れが「“良い意味での”ファンタジー小説に成し得ている。」と思う。
又、2作品共に“登場人物達の心象風景”の描き方が、実に見事!だから、読んでいる自分は、どっぷり作品世界に感情移入してしまった。特に「八月の御所グラウンド」は名作で、多くの人に読んで貰いたい。
総合評価は、星4.5個とする。
万城目学氏の作品と言えば図書館で借りた「ヒトコブラクダ層ぜっと」を読んだだけですが、「バカバカしい」と思いつつも、上下2巻のストーリーをいつの間にか読み切ってしまっていたもの。
giants-55さんが珍しくも4.5の評価をするのなら「八月の御所グラウンド」も読んでみたくなりました(笑)。
「十二月の都大路上下(カケ)ル」の登場した“此の世の物では無い存在”にも「そう来たか!」と思わされましたが、「八月の御所グラウンド」の方も同様で、加えて“しんみりとさせられた部分”も在り、「良い作品だなあ。」と思わされました。読む前の期待値が異常に低かった事で、其の反動が出たという面も在りましょうが。