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人の骨格標本が発掘された事を報じる地元紙の小さな記事を見付けた家具職人・豊(ゆたか)は、数十年前の小学生時代、仲間数人で山中に骨格標本を埋めた事を思い出す。
然し、其れは記事の発掘場所とは明らかに異なっていた。同時に、或る確かな手触りから「彼は、本当に標本だったのか?」との思いを抱いた豊は、今は都内で広告代理店に勤務する哲平(てっぺい)に会いに行く。
最初は訝しがっていた哲平も、ふと、記憶の底に淀んでいた或る事を口にする。
リーダー的存在だった骨格標本埋葬の発案者・真実子(まみこ)の消息は判らない儘、謎は思いも寄らぬ方向に傾斜して行く。
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宇佐美まことさんの小説「骨を弔う」を読了。 「宇佐美まこと」という名前から、勝手に男性と思っていたのだけれど、今回の記事を書くに当たって調べたら、女性という事だった。
1957年生まれの彼女が文壇デビューしたのは2007年、50歳の時。遅咲きと言えるだろう。「人の負の側面を、怪談へと導く作風が特徴。」との事だが、彼女の作品を読んだのは、今回が初めて。「2018年上半期最大の衝撃と感動」と帯に記された仰々しい惹句に興味を持ち、読む事にしたのだった。
彼女の此れ迄の作品を読んでいないので比較は出来ないが、「骨を弔う」に関して言えば、怪談色は強く無い。読み始めて暫くの間は「どういう展開になって行くのだろう?」と関心を惹かれたが、或る程度読み進めた段階で“落ち”が読め、実際に其の通りの落ちだった。「或る人物が、或る人物を異常な迄に庇う理由。」に付いては“少しの意外性”が在ったけれど、全体で言えば意外性は薄い内容。
又、「最後の章は必要無かった。」という思いが残る。ずっとシリアスな展開で来たのに、最後の章が“楽屋落ち”な感じが在り、“悪い意味でのコント”の様な感じで終わってしまっているので。
最後の章が存在した事で、どうしても評価を下げざるを得ない。総合評価は、星2.5個とする。