リアル・タイムで見て来た漫才コンビの中で、一番面白かったのは横山やすし&西川きよしの両氏だった。漫才には「ボケ」と「ツッコミ」が在り、其れ迄は「ボケが『本筋』を外し、其れをツッコミが軌道修正して再び『本筋』に戻す。」というスタイルが一般的だったけれど、「激しいツッコミを受け乍ら、ボケが終始イニシアチヴを握って『本筋』を守る。」というスタイルを確立させたのが“やすきよ”。絶妙な遣り取りで漫才界に“革命”を起こした、エポックメーキングな存在。
しかし其れだけ凄いコンビも、御互いにピンの仕事が増えて来ると“輝き”が失せて来てしまった。やすし氏も然る事乍ら、ピンでのきよし氏には驚く程面白さを感じなくなり、「“やすきよ”というコンビでこそ、2人の面白さが最大限に発揮出来ていたのだなあ。」と痛感させられたもの。
昨日、“二郎さん”こと坂上二郎氏が脳梗塞にて76歳で亡くなった。爆笑問題の太田光氏もそうらしいが、自分も大昔から「昭和九年会」(昭和9年生まれの芸能人が集う親睦団体。)が非常に気になる存在で、二郎さんも此の会のメンバー。石原裕次郎氏(享年52歳)に伊藤一葉氏(享年45歳)、玉置宏氏(享年76歳)、初代・引田天功氏(享年45歳)、藤村有弘氏(享年48歳)と若くして亡くなられた方々が少なくない中、二郎さんも早過ぎる死に感じる。
“欽ちゃん”こと萩本欽一氏と組んでいたコント・コンビ「コント55号」に関して、自分は「全盛期の最晩年」しか知らない世代。レギュラー番組では「コント55号のなんでそうなるの?」を見ていたけれど、2人の遣り取りに抱腹絶倒させられたもの。本当に面白かった。
しかしコンビとしての活動から各々がピンとして活動して行く様になってからは、「欽ちゃんの笑い」で笑う事は皆無になった自分。彼の名前が冠されたレギュラー番組が軒並み高視聴率を叩き出し、「視聴率100%男」(「レギュラー番組の総合計視聴率が100%を超える。」という意味から。)と呼ばれていた時代ですら、全く面白いと思った事が無かった。周りから「あんな面白い番組を、何で見ないの?」と不思議そうな顔で見られた事が在り、試しに“我慢して”1時間の番組を見続けたが、全くニヤリとも出来なかったし。
「欽ちゃんのねちっこいツッコミを、臨機応変に受け止めたり、受け流したり出来た二郎さん。」という相方が居たからこそ、欽ちゃんも光り輝いていた様に思え、そういった意味では“やすきよ”と似たコンビと言えるかもしれない。
ピン活動に軸足を移して行っても「笑いの世界」に身を置き続けた欽ちゃんに対して、二郎さんの場合は「役者の世界」に重点を置いていた様に感じる。「夜明けの刑事」(動画)で演じた人情味溢れる刑事・鈴木勇役(しょっちゅうハンカチで汗を拭っていたっけ。)、「スクール☆ウォーズ」(動画)の親馬鹿な社長・内田玄治役、「高校聖夫婦」(動画)の心優しい面を持つ男・大野勇一郎役等が印象深いが、(知っている人が殆ど居ないだろうけれど)「たぬき先生奮戦記」及び「たぬき先生騒動記」という「たぬき先生シリーズ」も個人的には忘れられない。合掌。