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「金が欲しいんやったら、爺を紹介したる。1千万でも2千万でも、御前の手練手管で稼げや。」。
妻に先立たれ、結婚相談所で出会った22歳歳下の小夜子(さよこ)と同居を始めた老人・中瀬耕造(なかせ こうぞう)は、脳梗塞で倒れ一命を取り留めたものの、意識不明の重体に。だが、其の裏で、実は小夜子と結婚相談所を経営する柏木(かしわぎ)は結託、耕造の財産を手に入れるべく、周到な計画を立てていた。病院に駆け付けた耕造の娘・尚子(なおこ)と朋美(ともみ)は、次第に牙を剥く小夜子の本性を知り・・・。
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結婚相談所に会員登録した独り身で金持ちの高齢男性に近付き、“妻”となってから殺害し、財産を巻き上げる。 そんな犯罪を繰り返す女性を描いた小説「後妻業」(著者:黒川博行氏)は、2012年から2013年に掛けて「別冊文藝春秋」に連載された作品だが、昨年発覚した事件内容に酷似しているという事でも、大きく取り上げられた。
昨年発覚した事件と、どうしても重ね合わせて読んでしまう訳だが、其れだけ記されている内容がリアルという証左でも在る。リアルで在るからこそ、作品世界にぐいぐい引き込まれて行くけれど、同時にリアル過ぎて不快さを感じる読者も居る事だろう。人間のエゴや浅ましさが剥き出しになっているし、露骨な性的描写も、受け付けない人が居るかも。
「面白い作品。」と言ったら語弊が在るかもしれないが、兎に角、「読み始めたら止まらない作品。」なのは確かだ。
総合評価は、星4つとする。
「後妻業」、不快さを感じさせる作品では在るのですが、登場人物達が関西弁を口にしているという事で、其の不快さがやや緩和されている様な面は在りますね。関西弁の持つユーモラスで和みの在る所が、良い意味で此の作品に潤いを与えている様にも。
文学賞受賞作品も、当たり外れが結構在る。芥川賞なんかも、近年は「何で、こんな作品が受賞したの?」と首を捻ってしまう物が少なく無い。関係者内の柵も在るのでしょうね。