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不可能な謎専門の御殿場倒理(ごてんば とうり)。不可解な謎専門の片無氷雨(かたなし ひさめ)。
密室事件と思いきや、壁には巨大な穴が開けられていた。犯人の目的とは? 「穴の開いた密室」)より
トンネルに入った女子高生が、忽然と姿を消した。彼女は、一体何処へ? 「消える少女追う少女」より
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2012年、第22回鮎川哲也賞を「体育館の殺人」にて、“同賞では史上初の平成生まれの小説家”として受賞した青崎有吾氏。同作品に自分は「星3.5個」という“微妙な総合評価”を付けたが、若き才能の未来には大きな期待をした。受賞した年は21歳だった彼も、今年で29歳になる。もう小説家としては“中堅所”と言って良いポジションだ。
彼の作品はホラー要素が強そう(そういうのは、個人的に苦手。)な「アンデッドガール・マーダーファルス・シリーズ」以外全て読んで来た積りでいたのだが、今回手に取った「ノッキンオン・ロックドドア2」のタイトルを見て、第1弾「ノッキンオン・ロックドドア」という作品の存在を知った。第1弾を読まないで、先に第2弾のレヴューをする事になる。
全部で6つの短編小説で構成されているが、一番最初の「穴の開いた密室」という作品は、非常にユニークな設定。ミステリーで“密室殺人”というのは珍しく無いけれど、此の作品は密室殺人では無いどころか、被害者が亡くなっていた建物の壁には、とんでもなく大きな穴が開けられていたから。「犯人は誰なのか?」、「殺害動機は、一体何なのか?」という事に加え、「犯人は何故、そんなにも大きな穴を開ける必要が在ったのか?」という謎を解き明かさなければならないのだ。設定もだが、大きな穴を開けた理由もユニーク。
設定のユニークさで言えば、「消える少女追う少女」という作品も悪く無い。或る人物の“正体”が明らかになった時、「そう来たか・・・。」と苦笑してしまった。珍しい設定では決して無いけれど、こういう展開でこういう設定がされるとは予想外だったので。
一番印象に残ったのは、最後の「ドアの鍵を開けるとき」という作品。御殿場倒理と片無氷雨という個性的な2人が、探偵業を一緒に始める事になった切っ掛けが描かれている。大学生として最後の年(5年前)、或る“事件”が発生しなければ、倒理は“別の友人”と一緒に探偵業を始める積りだったのだが、事件発生により氷雨が“相棒”となった。其の事件の謎が5年の時を経て明らかになるのだが、何とも言えないほろ苦さを感じてしまった。
「体育館の殺人」以降、青崎作品はキャラクター設定及びストーリーは悪く無いのだが、パンチ力に欠ける気がしてならない。「素質は凄く在るのだけれど、“殻”を破れないでいる。」という感じが。ミステリー・ファンとして、非常にもどかしさを感じてしまう小説家の1人だ。
総合評価は、星3つとする。